20061223

白血球に血管再生促す働き 千葉大の研究で確認


2006年12月23日

腕から採血して集めた白血球の一種に、血管や心筋の再生を促す働きがあることが、千葉大の小室一成教授(循環病態医科学)らの研究でわかった。血管が詰まる病気で、脚の切断を迫られた患者の治療に使ったところ、症状が改善し切断を免れた人が少なくなく、心機能が回復した例もあった。新たな再生医療の方法につながる成果だ。

再生医療では、骨髄の幹細胞が「血管を作ったり心筋細胞に分化したりする」と期待され、臨床研究が進められている。だが、最近、骨髄幹細胞には分化能力がないか、あっても治療に使えるほど効率的ではない、などと報告され、期待ほどの成果が出ていない。

今回使った白血球の仲間は、単核球と呼ばれ、細菌などが体内に入った際にやっつける役割を担っている。小室さんらはこの単核球を集め、筋肉に注入すると骨格筋細胞が増え、それが血管新生を促す物質を出して血管ができていくことを基礎実験で突き止めた。

そこで、脚の血管が詰まる閉塞(へいそく)性動脈硬化症や炎症などで同様の症状を起こすバージャー病の患者約50人に対し、腕の静脈から3時間かけ採血。取り出した単核球を1時間かけ脚に注入した。

数週間後、痛みが和らいだり潰瘍(かいよう)が小さくなったりするなど7割の人で症状が改善し、26人が足首やひざから下を切断せずにすんだ。さらに13人は心臓の血流もよくなり、血液を送り出すポンプ機能の回復も確認できた。

骨髄の幹細胞を採取しないですめば、患者に大きな負担をかける全身麻酔を使わないで、治療が可能になる。国立病院機構の矢崎義雄理事長(循環器内科)は「極めて興味深い結果だ。骨髄の幹細胞に分化能力があったとしても、高齢になると減るので治療に使うのは難しい。ただ、効果をきちんと判定する手法を確立する必要がある」と話している。

 

《朝日新聞社asahi.com 2006年12月23日より引用》

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