20061219

BCGがアレルギー防ぐ仕組みを解明 理研


2006年12月19日

結核予防のためのワクチン「BCG」が、本来無関係なはずのアレルギーを抑える仕組みを、理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの谷口克(まさる)センター長らのグループが明らかにした。花粉症やアトピー性皮膚炎などの新しい治療法につながる可能性があるほか、「アレルギー患者の増加は衛生状態の改善が一因」とする説を補強する成果だ。米医学専門誌(電子版)に18日発表する。

弱毒化したウシの結核菌をワクチンとして使うBCGは、国内では戦時中から集団接種が始まった。従来はツベルクリン反応(ツ反)検査で陰性の場合に接種していたが、05年4月からは乳児全員に生後6カ月までの接種が義務づけられた。

過去の疫学調査で、感染やBCGで結核菌への抗体ができたツ反陽性の人は、抗体ができていないツ反陰性の人に比べ、ぜんそくの発生率が約4分の1と低いことなどが知られていた。しかし、なぜアレルギー疾患が減るのかは謎だった。

谷口さんらが、BCGを注射したマウスを詳しく調べたところ、体内に侵入した細菌などを攻撃する免疫細胞の一種「ナチュラルキラーT細胞」(NKT細胞)が活性化されていた。NKT細胞は、アレルギー反応に関係するIgE抗体(たんぱく質)を作るリンパ球を死なせることで、IgEがむやみに増えるのを防いでいた。人にBCGを注射しても同じ結果が得られたという。

アレルギー疾患は特に先進国での増加が著しいと言われ、衛生環境の向上で病原菌に触れる機会が減ったこととの関連を指摘する説がある。谷口さんは「今回の成果は、この説の裏付けになるのではないか」と言う。

 

《朝日新聞社asahi.com 2006年12月19日より引用》

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