BSE初確認から5年、続く神経戦 計28頭感染
2006年09月11日08時54分
牛海綿状脳症(BSE)に感染した牛が国内で初めて見つかってから5年。最近は、かつてのようなパニックこそ起きないが、今年もすでに7頭の感染牛が確認されている。これまでに見つかった計28頭の分析から、北海道を中心に2度にわたる感染のピークがあったことが判明。さらなる拡大を防ぐため、関係機関が神経をとがらせる事態が続く。
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8月11日、国内28頭目となるBSE感染牛が北海道で確認された。道の調査チームは、BSEに感染しやすい1歳まで同じ環境で育てられた牛を追った。出産記録や販売伝票から分かったのは16頭。焼却処分にした。
日本で初めて感染牛が出た直後は、数十頭規模での処分が続いた。しかし、トレーサビリティー(履歴管理)制度の導入や処分対象を絞り込んだことなどから、影響は限定的になった。「作業が効率化したのは確かだが、地元職員だけでは足りず、応援を出した」と道の担当者は話す。
感染牛が見つかるたびに、飼料の由来など地道な調査が繰り返される。イタリア産の肉骨粉、オランダ産の動物性油脂……。いくつかの感染源が疑われてきたが、それらと接触した形跡がない牛の感染例も出てくる。BSEは感染が判明するまで平均6~7年と長いため、原因特定は難しい。
それでも、少しずつ日本での流行の特徴が浮かび上がってきた。
感染牛が生まれた時期は、ほぼ二つに絞られる。95年末~96年夏と99年夏~00年秋だ。出生地は北海道に集中している。
96年ごろ、外国産の汚染原料で感染し、99年ごろから第1波の感染牛が北海道で肉骨粉に回り、第2波の流行につながった――。多くの専門家が推測するシナリオだ。
第2波で感染を断ち切れるかどうか。01年には肉骨粉が完全に禁じられ、直後に生まれた2頭を除けば、その後、感染牛は出ていない。
今年4月。政府内に緊張が走った。福島県で、04年生まれの牛が1次検査で陽性と診断された。「何かの間違いであってほしいと願った」と農水省関係者は振り返る。
幸い精密検査で「シロ」と分かったが、規制漏れなら、国内対策を根本から見直さなければならなくなる局面だった。
食品安全委員会プリオン専門調査会座長の吉川泰弘・東京大教授は「今後2~3年で20頭ほど出るだろうが、規制の徹底で浄化は進む」と話す。
《朝日新聞社asahi.com 2006年09月11日より引用》