20060902

がん「攻撃部隊」体外で育成 米グループが新治療法


2006年09月02日06時51分

免疫細胞を操作してがんを攻撃させる原理

免疫細胞を操作してがんを攻撃させる原理

外敵から身を守る免疫細胞を体外に取り出し、特定のがんを攻撃する「専門部隊」に育てたあと、体内に戻してがんを縮小させる実験に、米国立がん研究所のグループが成功した。がんの免疫療法の新しい手法として注目されそうだ。米科学誌サイエンス電子版で1日、発表された。

同研究所のスティーブン・ローゼンバーグ博士らは代表的な皮膚がんの一つ、悪性黒色腫(メラノーマ)の患者に協力を求め、患者の血液から免疫細胞のT細胞を取り出した。そして特殊な遺伝子を組み込んでから患者に再注入した。

遺伝子には、メラノーマ細胞を識別するための情報が組み込まれており、T細胞はこの情報をセンサーとして使い、メラノーマ細胞を見分けて攻撃する。

実験では、他の治療法では回復の見込みがない17人の患者のうち2人で肝臓や肺に転移していたがんがほぼ消えるなど、一定の効果がみられた。

体にはがんなどの標的をたたく仕組みがもともと備わっているが、がんの広がりに攻撃力が追いつかないケースが多い。 慶応大の河上裕・先端医科学研究所長(免疫学)は「免疫力を利用してがんを治療する試みは以前からあるが、効果は十分とは言えない。今回の方法はより高い治療効果が望め、(T細胞に組み込む情報を変えれば)メラノーマ以外のがんに使うことも可能だ」としている。

 

《朝日新聞社asahi.com 2006年09月02日より引用》

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