鳥インフル、人は肺の奥で感染 鳥取大・東大グループ
2006年03月23日08時23分
世界で感染拡大が続く高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が、人の体内では鼻やのどでなく、肺の奥深くにある細胞で感染することが分かった。鳥取大農学部の新矢恭子助教授(ウイルス学)と東京大医科学研究所の河岡義裕教授(同)らのグループが明らかにした。
このため、患者からせきやくしゃみで感染が広がる危険は現時点では低そうだが、ウイルスの突然変異で大流行につながる恐れはあるという。23日付の英科学誌ネイチャーに発表する。
インフルエンザウイルスは、細胞表面の鍵穴にあたる特定の分子(受容体)と結びつき、侵入する。人と鳥では同じ分子だが、少しだけ構造が異なる。人から人への感染はほとんどないが、メカニズムはよくわかっていない。
河岡教授らは、鳥インフルエンザウイルスの受容体が、人の鼻の粘膜や気管支、肺などにないか患者の組織で調べた。その結果、のどや鼻粘膜ではほとんど無く、肺など気道の奥深くに多く分布していた。このことから今のところ、ウイルスの増殖は肺など呼吸器の奥深くに限られ、鼻水や唾液(だえき)によって他の人に感染する危険は低いと考えられるという。
河岡さんは「受容体を見る限り、誰でも鳥インフルエンザに感染する恐れはあるが、人から人へすぐ感染するわけではない。ただし、のどや鼻で感染するようなウイルスに変異していないか監視していく必要がある」と話し、他にどんな変異を遂げると人に感染しやすい型になるかや、重症化する原因などについても研究を進める考えだ。
《朝日新聞社asahi.com 2006年03月23日より引用》