20180630

対米「包囲網」構築急ぐ TPP関連法成立、年明けにも発効


2018年06月30日

米国を除く11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP11)が年明けにも発効する見通しとなった。政府はTPP以外にも自由貿易の枠組みをアジアに広げる考えで、保護主義的な姿勢を強める米国の「包囲網」の構築を急ぐねらいだ。▼1面参照

協定そのものは13日に国会で承認された。29日に関連法が成立したことで、国内手続きはほぼ完了した。11カ国のうち、メキシコに次ぐ2番目の早さとなる。ニュージーランド、豪州、カナダも審議中で、シンガポールやベトナムも審議に前向きだ。今秋にも発効に必要な6カ国目が国内手続きを終える見通しだ。その60日後となる年明け早々にも発効する見通しだ。

日本からカナダに向けて輸出する乗用車の関税(6・1%)は発効から5年目に、日本に輸入されるキウイフルーツの関税(6・4%)は発効後すぐに撤廃される。工業製品を中心に輸出増が期待され、農産品などでは輸入増が見込まれる。政府は日本の国内総生産(GDP)が年約8兆円増え、約46万人の雇用につながるとする。一方、国内農家が打撃を受けるおそれがあるとして、関連法には農家への補助金などを盛り込んだ。

日米両政府は、来月にも「FFR」と呼ばれる新たな閣僚間協議を始める。二国間交渉にこだわる米国は、この場で農畜産物の輸入増などを日本に要求する可能性がある。そんな米国をかわす「防波堤」との位置づけがTPPだ。関連法を審議した参院内閣委では「TPPの合意水準を上回る米国からの要求は断固として拒絶する」など5項目の付帯決議も議決した。

参加国の拡大にも前向きだ。タイやコロンビア、インドネシア、韓国、台湾、英国が参加を検討しており、7月中旬には神奈川県内で首席交渉官会合を開き、発効後に参加国を増やす手続きについて議論する。

 

■米産品「蚊帳の外」に

日本は、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する自由貿易の枠組み「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」の交渉も急ぐ姿勢を示しており、7月1日には都内で閣僚会合を開く。世耕弘成経済産業相は「政治的課題を絞り込み、協定妥結への道筋を付けたい」と話す。

日本が年内妥結を目指すASEANを支持する考えを表明したのは、米トランプ大統領が保護主義的な姿勢を強めた今年3月。TPP、RCEPと、米国抜きの自由貿易圏を二重三重につくって米国産品を「蚊帳の外」に置く状況をつくりだし、米国を牽制(けんせい)する作戦だ。

ただ、RCEPの交渉は難航しているのが実情。多くの関税の撤廃を求める日本や豪州に対し、自由化の度合いは低くても早期に妥結したい中国やインドなどが対立する構図が続く。

もともとトランプ氏は4月の日米首脳会談で「TPPに戻りたくはない。二国間の協定の方がよい」と言い切っている。多国間貿易協定を張りめぐらす日本政府の取り組みが、実を結ぶかどうかは見通せない。(南日慶子)

 

【図】

TPP発効後、関税はこうなる

《朝日新聞社asahi.com 2018年06月30日より抜粋》

 

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