20180421

牛肉と車、引かぬ米国 豪との競争危惧/輸出入に大差 通商協議


2018年04月21日

 

日米首脳会談で実施が決まった閣僚級の通商協議では、米国側は牛肉と自動車の市場開放を標的にする見通しだ。なぜ、この2品目にこだわるのだろうか。

「日本は牛肉などの分野で一方的な譲歩をすべきだ」。米側で協議を担うライトハイザー米通商代表部代表は昨年の就任時から牛肉を挙げ、日本との交渉に強い意欲を示してきた。背景には、米国内の畜産業界からの強い要請がある。

日本の輸入牛肉市場(2017年)は豪州(シェア50・3%)と米国(同41・7%)の2強が全体の9割あまりを占める。米国産の輸入関税は38・5%だ。これに対し、豪州産は15年に日本との経済連携協定(EPA)が発効したため、現在は26・9~29・3%。米国抜きの11カ国によるTPPが発効すれば、加盟する豪州の牛肉の関税は最終的には9%まで下がる。

トランプ大統領の公約でTPPを離脱した米国は、このままでは豪州との関税の差が広がる一方だ。TPPに残るカナダやニュージーランドも日本への輸出拡大を狙っており、米国産は市場を奪われかねない。  3月に来日した米農務省のミッキニー次官は「米国の商品が不利になるかも知れないからこそ、二国間のアプローチが重要だ」と二国間交渉への強い期待をにじませた。

トランプ氏がさらにこだわるのが自動車だ。首脳会談後の共同記者会見でも「日本は米国に何百万台も輸出しているのに、米国は日本にあまり輸出していない」と力を込めた。

自動車業界団体によると、17年の日本から米国への輸出台数は約173万台。これに対し、米国車の日本での販売台数は約1万3千台だ。「ビッグスリー」と呼ばれる米大手の一角、フォード・モーターは16年、販売不振で日本から撤退した。

日本の輸入車の関税はゼロで「アメリカ車は車種が少なく、そもそも競争力がない」(自動車メーカー幹部)といわれるが、貿易赤字の解消を重視するトランプ氏には響きそうにない。

トランプ氏は2月にまとめた経済報告で、日本の「非関税障壁」として日本独自の安全基準やメーカー別の販売店網といった複雑な流通の仕組みなどを挙げた。協議ではこれらの改善を要求される可能性がある。

日本独自の軽自動車の税制優遇や規格そのものの撤廃を求められることもありえる。軽自動車は国内新車販売の4割近くを占め、米国メーカーがつくっていない軽自動車が輸入車の販売を妨げている、というのが米国側の理屈だ。

(山村哲史、久保智)

【図】

日本の輸入牛肉市場で米国は豪州と競う

《朝日新聞社asahi.com 2018年04月21日より抜粋》

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