20180217

牛の顕微授精、高まる期待 畜産研究所が成功、子牛誕生 優れた種雄を安定生産へ/青森県


2018年02月17日

 

顕微鏡を使って卵子と精子を人工的に授精させる「顕微授精技術」で、県産業技術センター畜産研究所(野辺地町)が、黒毛和種の子牛の生産に成功した。緻密(ちみつ)な作業が求められるため、全国でも宮城と千葉の両県でしか成功例はなかった。優れた種雄牛を安定的に作り出せると期待されている。

この技術は、太さ0・01ミリのガラス管でシャーレ内の精子を吸い込み、直径0・1ミリの卵子に刺して精子を注入するというもの。元来の体外受精は、卵子の入った培養液に精子を混ぜて受精を待つというものだったが、精子の性質によって成功率が左右されることがあった。今回の技術では、こうした不確定さを取り除くことができるという。

ただ、顕微鏡をのぞきながら、専用の機器でガラス管を操作しなければならず、同研究所繁殖技術肉牛部の平泉真吾部長(54)は「集中力と忍耐力、そして手先の器用さが必要」。担当した加川真二朗研究員(29)は約2年間の訓練を積んだといい、昨年2月にメスの子牛「あきら」が誕生した時は「一安心した」と振り返る。

一方、同研究所が力を入れているもう一つの技術が「割球分離技術」。受精卵を分離させて二つの受精卵にするというもので、双子の出産を可能にする。同研究所は、顕微授精技術と組み合わせる研究を進めており、実現すれば、安定して短期間で種雄牛が生産できる体制が整う。

これまでは、ある雄牛が種雄牛にふさわしいかを判断するには、その子どもの肉質を調べなければならず、その誕生や成長を待つ必要があった。しかし、二つの技術によって、高確率で双子を生み出せるだけでなく、一方の肉質を調べるだけで、同時に生まれ、遺伝情報も同じである「きょうだい」に、種雄牛としての適格能力があるかどうかを判断できるようになる。

生存する県のエース雄種牛「基幹種雄牛」は現在、3頭のみ。平泉部長は「全国的に種雄牛がどんどん改良されており、時代に合った肉牛が求められている。今後はこれらの技術をもとに作った受精卵で、双子を生産したい」と話している。(中野浩至)

【写真説明】

直径0・1ミリの卵子(中央)に、ガラス管を刺して精子を注入する=畜産研究所提供

顕微授精技術をもとに誕生した黒毛和種の雌牛「あきら」=昨年5月、野辺地町

「顕微授精技術」で子牛の生産に成功した加川真二朗さん=野辺地町

《朝日新聞社asahi.com 2018年02月17日より抜粋》

 

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