20171218

(ひらく 日本の大学)地域ニーズ沿う、人材育成に力点 朝日新聞・河合塾共同調査


2017年12月18日

高度な研究活動か、学生の教育の充実か。海外を視野にいれた研究拠点の確立か、地域のニーズにあった人材育成か――。朝日新聞と河合塾が今夏に共同で実施した調査「ひらく 日本の大学」から、日本の大学が今、何を重視してどんな将来を見据えているのかについて、特徴や傾向を紹介する。

「ひらく日本の大学」は今夏、全国の国公私立751大学を対象に行った。88%の664大学から寄せられた回答を元に分析した。  まず、大学としてどんなことを重視しているのかについて聞いた。「研究の高度化」と「教育の充実」の二つのうち、「最も重視」している方を挙げてもらった。

「教育の充実」を選択したのは568大学。国立が50大学、公立が65大学、私立が453大学あり、全体の92%を占めた。私立大が多数で、私立大全体でみると96%が「教育の充実」を選んでいた。

一方、「研究の高度化」と答えたのは54大学。国立が27大学、公立が10大学、私立が17大学あった。旧帝大や地方の国立大、伝統ある大規模私立大なども、研究の高度化を「最も重視」とした。

教育の充実を「最も重視」とした568大学のうち、地方にある大学は60%で、入学定員3千人未満の大学が97%を占めた。規模の小さい地方の私立大学ほど、教育の充実を重視する傾向にあるようだ。

また、目指す方向性について、「地域・社会のニーズに応える人材育成を担う」「特色ある分野で全国的な教育研究」「海外大学と伍(ご)して世界で卓越した教育研究」の三つのうち、最も重視するものを聞いた。

最も多かった回答は「人材育成」で496大学。大学全体の80%を占め、私立大全体のうち82%がこれを選んだ。「全国的な教育研究」を選択したのは78大学、「世界で卓越した教育研究」は49大学。全国的や世界的な教育研究よりも、地域や社会に貢献できる人材育成にシフトしていることがうかがえる。

■職業能力や人格の形成を重視

さらに、大学の現状について細かく分析するため、「大学の機能として何を最も重視するか」、「育成すべき資質・能力として何を最も重視するか」という二つの質問への回答を元に4グループに分類した。

その結果、「職業能力育成重視」が284大学、「教養・人格の形成重視」が222大学、「学術育成重視」が61大学、「世界的研究・教育拠点」が52大学、となった。

「職業能力育成重視」グループの大学数は最も多く、全体の46%にのぼった。このグループには、入学定員3千人以上の大規模大学はない。また、グループの62%は地方にあり、入学定員300人未満の小規模な大学も46%を占めた。

「教養・人格形成重視」を選んだグループは、学生数が最も多く91万人で、大学数でも全体の36%を占めた。国立大より中規模の私立大や公立大が多く、多数の女子大もこれを選んだ。

「学術育成重視」を選んだグループは、大学数全体の10%。私立に比べると国公立が多く、国立大全体の26%がこれを選んだ。総合大学も含まれているが、畜産や工学、芸術、医療などの単科大もこれを選んだ。

「世界的研究・教育拠点」と回答したグループには、国立の旧帝大や有名私大が含まれた。大学数としては全体の8%だが、入学定員3千人以上の大規模大学が含まれるため、全体の学生数の20%を占めた。このグループの大学の63%が東京や大阪、愛知など大都市圏にあることも特徴だ。

このグループ分けからも、世界的な研究教育拠点としての確立を目指す大学よりも、地域や社会で卒業後に求められる即戦力として活躍できる職業能力を育て、学生の人格形成や必要な教養を身につけさせることに注力する大学が増えていることがわかる。

(円山史)

「最も重視」する項目を選ぶ質問で、複数回答した大学もあるため、各設問について大学の合計数が異なる場合もあります。

【図】

教育と研究、どちらを最も重視か/目指す方向性

大学数による内訳/学生数による内訳

 

《朝日新聞社asahi.com 2017年12月18日より抜粋》

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