20170901

冷凍牛肉、値上がり小幅 米国産など輸入制限1カ月 焼き肉店「年内調達済み」


2017年09月01日

米国産などの冷凍牛肉の関税率(38・5%)を、来年3月末まで50%に引き上げる緊急輸入制限措置(セーフガード)が8月から発動されて1カ月になる。卸値の動きは現時点で小幅だが、焼き肉店などは値上がりを見越して動き始めた。仕組みの見直しも議論されることになりそうだ。

首都圏を中心に約140の焼き肉店を展開する「牛繁ドリームシステム」では、1カ月で約15トンの米国産冷凍牛肉を使う。1人前490円(税込み)という安さが売りのカルビやロースなどだ。

すでに年内に使う分は調達済みだが、来年以降の分はこれから。飯野公敏商品部長は「今後の展開によっては、影響が出る可能性がある」と心配する。

消費者への影響は今のところ広がっていない。スーパーの西友は、米国産冷凍牛肉を使った焼き肉用の味付けカルビを、8月以降も100グラム147円(税抜き)で据え置くことにした。

農畜産業振興機構が調べた大手卸売業者間の21~25日の取引相場(速報値)は、米国産冷凍牛肉のショートプレート(バラ肉)で1キログラム当たり800~825円。7月の平均より1~4%高い水準だが、税率の引き上げ幅と比べると小幅にとどまる。冷凍牛肉は2年程度の保存がきくため、すぐに影響が出にくい事情もある。

今後は値上がりを嫌う業者が、米国産でもセーフガードが発動されていない冷蔵品や、豪州など対象外の国に乗り換える可能性がある。農林水産省は商社や外食店への聞き取り調査で動きの把握を進めている。

■米、赤字拡大を懸念

牛肉のセーフガードは、輸入品の急増から国内生産者を守る仕組み。個別の貿易協定がない米国、カナダ、ニュージーランド産などが対象で、3カ月単位で全輸入量と、対象国からの輸入量の伸び率がいずれも前年同期より17%を超えると自動的に発動される。

日本と貿易協定を結ぶ豪州などには適用されないだけに、米側の反発は強い。発動が決まるとすぐに、パーデュー米農務長官が「米国の貿易赤字の総額が増えると懸念している」との声明を出した。

これに対し、麻生太郎副総理兼財務相は「TPP(環太平洋経済連携協定)が発効されたらこの措置はなくなっていたはずだった」と米側を牽制(けんせい)しつつ、「検討の余地があることは確かだ」と発言。10月にも予定されている日米経済対話に向けて、3カ月ごとの対象期間を延長することなどを検討する可能性を示した。

セーフガードは、関税引き下げの条件として導入した経緯があり、発動基準を緩めれば国内の生産者の反発を招きかねない。日米経済対話では米側が、牛肉の関税自体の引き下げを求めてくる可能性もあり、駆け引きの材料になりそうだ。(久保智、山村哲史、栗林史子)

【写真説明】

焼き肉チェーン「牛繁」では米国産冷凍牛肉の代わりに、米国産冷蔵牛肉を使った9商品を半額にするセールを9月上中旬に計画している=東京都新宿区

 

《朝日新聞社asahi.com 2017年09月01日より抜粋》

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