20170708

農業支援、前倒しも 日欧EPA、国内対策が始動


2017年07月08日

大枠で合意した日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)をめぐり、政府は輸入関税の引き下げで影響が及ぶ農業分野などを支援する国内対策の検討に入った。最終合意に向けた交渉を急ぐ一方、2019年初めをめざす協定の発効に備え、国内の体制整備を本格化させる。

政府は近く、環太平洋経済連携協定(TPP)対策本部を改め、EUとのEPAにも対応する組織にする。TPPの発効を前提に講じる支援策を前倒しで実施することも視野に入れる。

山本有二農林水産相は7日の記者会見で、EPAの発効で影響がおよぶ分野として畜産や林業、パスタ、菓子などを挙げ、補助金を増やすなどの支援策を検討する考えを示した。

EUとの最終盤の交渉の主役だったチーズについては、TPPで関税を維持した種類も含め、一定の枠内で引き下げることになった。大枠合意を踏まえ、チーズ向けに生乳を出荷する酪農家に対し、補助金の引き上げなどを検討する。

政府は国内対策の検討と並行して、EUとなお折り合えていない分野の交渉を急ぐ。最大の課題が、投資家と国の間の紛争解決手続き(ISDS条項)だ。

企業などが投資先の国の政策によって被害を受けた場合の紛争を解決する仕組みで、日本側は、TPPで合意したように、紛争が起こるたびに仲裁人を選び、一審制で仲裁する仕組みを主張する。一方、EUは常設の裁判所を設けて二審制で審理する仕組みを求める。

双方はこうした詰めの交渉を急ぎ、今年末をめどに最終的な合意を目指す。

最終合意後、EUは加盟28カ国すべての公用語に翻訳し、欧州議会と各国の議会に承認を求める。日本の手続きよりも時間がかかりそうだが、欧州議会と日本の国会が承認すれば、協定は暫定的に発効される見通し。各国議会の承認を待たずに関税の引き下げや撤廃などが始まることになる。

(山村哲史、ブリュッセル=津阪直樹

 

《朝日新聞社asahi.com 2017年07月08日より抜粋》

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です