輸入豚肉、こだわりトコトン 商社が独自ブランド開発 牛高値で消費者シフト
2017年07月05日
海外産の豚肉の品ぞろえが充実してきた。販売に力を入れる大手商社が独自ブランドを相次いで開発。エサの中身や育て方を工夫するなどして、消費者に安全・安心をPRする。
豚のお尻をイメージしたロゴマークが、スーパーの精肉売り場に並ぶ。伊藤忠商事がカナダから輸入し、関連会社「プリマハム」を通じて独自ブランドとして展開する「HyLife pork」(ハイライフ・ポーク)。三つの品種を掛け合わせた日本市場向けの「三元豚」で、2016年は前年より15%増となる2万5千トンを輸入した。
生産するのは伊藤忠が49・9%を出資するカナダのハイライフ社。こだわったのはエサだ。小麦を多く与え、脂っこさを抑え、揚げてもあっさりとした食感が楽しめるという。昨年9月には、東京都内にこの豚肉を使った料理を扱うレストランをオープンした。豚肉料理の講座も開くなど、販路拡大に工夫をこらす。
三井物産の関連会社「スターゼン」もカナダ産の三元豚を手がける。養豚に適した涼しい気候のケベック州の農家と契約。交配を工夫して、うまみ成分のアミノ酸を多く含んだ品種を開発した。出荷直前にペパーミントを食べさせることで、肉の色あせや臭みを抑えている。
今年4月に「ケベックの恵み」と名付けて展開。カナダ産であることを前面に押し出す。担当者は「よい品質の商品ができれば輸入肉でもマイナスにはならない」と話す。今年度は6千トンの輸入を見込む。
さらに別の品種を掛け合わせた「四元豚」を展開するのは、住友商事の完全子会社「住商フーズ」だ。米国の契約農場と共同で開発した。豚の成長にあわせて与えるエサの種類や量をこまかく調整する。軟らかい肉質が人気という。5月から大手スーパーが自主企画商品に採用した。
16年度の豚肉の輸入量は87万7千トンで、13年度の74万4千トンから毎年増え続けている。各社が輸入豚肉に力を入れる背景には、ライバルの輸入牛肉の値上がりもある。農畜産業振興機構の統計によると、今年5月の米国産の牛肉価格は前年同期より1割ほど上がった。豪州産も高値で推移している。
日本食肉輸出入協会によると、輸入牛肉の高騰は中国政府が米国産牛肉の輸入解禁を表明したことや、豪州で続いた干ばつなどが影響している。高い牛肉を敬遠した消費者が豚肉にシフトした結果、国産を中心に豚肉の価格も値上がりしているという。(鬼原民幸)
■大手商社が手がけるブランド輸入豚肉
<HyLife pork>
取扱企業:伊藤忠商事
産地:カナダ産
特徴:脂っこさの少ないあっさりとした食感
<ケベックの恵み>
取扱企業:三井物産の関連会社
産地:カナダ産
特徴:ペパーミントを与え肉の臭みを抑制
<四元豚>
取扱企業:住友商事の子会社
産地:米国産
特徴:鮮やかなピンク色で口溶けがいい
【写真説明】
住商フーズが手がける「四元豚」の売り場。どのパックにも、ロゴマークのシールが貼られている=東京・東中野のスーパー「サミット」
《朝日新聞社asahi.com 2017年07月05日より抜粋》