20051124

埋設農薬、12道府県で汚染確認 本社全国調査


2005年11月24日08時07分

人体に影響があるとして5種類の有機塩素系農薬が70年代に使用禁止にされた際、国の指導に従い地中に埋めるなどした31道府県のうち、12道府県で土壌や地下水の汚染があったことが朝日新聞社の全国調査で分かった。そのうち5府県は汚染の事実を公表していなかった。国は04年度から埋設農薬の最終処理に乗り出したが、埋設場所などの情報公開には消極的。専門家は「住民が汚染にさらされる危険もあり、情報の公開は不可欠」と指摘する。

朝日新聞社が47都道府県の農政担当部局に、当時の処理方法や現状などについて取材した。

旧農林省は71年、5種類の農薬を地中に埋めるよう指導した。宮城、千葉、岡山、福岡など30道県は埋設し、大阪は地上倉庫で保管、埼玉、兵庫、愛知など17都府県は農協などを通じてメーカーに返却した、としている(福井は一部返却、一部埋設)。

当時、同省は埋設の基準を示さず、「地下水がわく場所は避け、粘土質の場所を選ぶ」などとしただけだった。

農水省は「無害化処理技術が確立できた」として最終処理を始めたが、石川、広島など6県はこれに先んじて掘り出し、全量を産廃業者などに処理させた。

01年以降、埋設農薬が残る自治体の大半が汚染調査を開始。宮城、秋田、福島、新潟、長野、熊本など12道府県で汚染が確認された。うち山形、大阪、山口、福岡、沖縄の5府県は環境基準を超す汚染の事実を公表していなかった。「埋設場所が分かると犯罪に利用される恐れがある」「汚染は限定的」などと理由を説明した。  福岡では5月、環境基準の1.7倍のBHCが02年に土壌から検出されていた事実を伏せていたことが判明。その際、今年2月の再調査で基準の800倍に汚染が増大していたことも分かった。

植村振作・元大阪大助教授(環境科学)は「犯罪の危険性を口にするのは行政が管理の現状に自信を持てていないことの裏返しではないか」と話している。

〈有機塩素系農薬〉 体内に入ると蓄積されてがんなどにつながる残留性有機汚染物質(POPs)の代表例。吐き気やけいれんなどの中毒症状も引き起こす。国は70年代にアルドリン、ディルドリン、エンドリン、BHC、DDTの5種類を使用禁止とした。04年発効のストックホルム条約は、BHC以外の4種類を含む計12のPOPsの廃絶や削減を定めた。国は、残留性が高いBHCも含めて最終処理の対象にしている。

 

《朝日新聞社asahi.com 2005年11月24日より引用》

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