「万能細胞」で新薬開発へ NEDOなどが開発に着手
2005年10月29日
ヒトの受精卵から作った胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を新しい医薬品の評価に使う技術開発事業を、独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」が始める。ES細胞は長期間、無限に増殖でき、体のあらゆる組織や臓器に育つ可能性を持つ「万能細胞」とされ、この特性を生かす取り組みだ。
京都大再生医科学研究所(中辻憲夫所長)やアステラス製薬などのグループに委託し、今年度中に着手する。
新薬開発では、患者での臨床試験前に動物やヒトのがん細胞などで効果を確かめる。新しい事業では、これに代わってES細胞を使う。
ES細胞を病気にかかった組織の細胞に分化させ、新薬の候補となる化合物を働かせれば病気への効果がよりわかる。ES細胞を肝臓や心臓の細胞にして使えば毒性や安全性の確認もできる。臨床試験でないとわからなかったことが、事前に把握できる可能性が高まると期待されている。
臨床試験に入って新薬候補の危険性や効果の乏しさがわかると、巨額の開発費が無駄になる。そうしたリスクを回避できれば、薬価を下げることにもつながるという。
京大再生研は03年に国内で唯一、受精卵からのES細胞株樹立に成功し、これを特定の臓器や組織に分化させる研究に取り組む機関へ分配してきた。新事業をES細胞利用のもう一つの柱にすることを狙い、アステラス製薬などとの協力で技術を製薬業界に提供する方法も検討する。
当面はマウスやサルのES細胞で準備を進め、来年度以降、文部科学省にヒトES細胞の使用計画を申請する予定だ。現行指針ではこうした取り組みは認められている。
《朝日新聞社asahi.com 2005年10月29日より引用》