20051025

親知らずから間葉系幹細胞 体の組成再生に道 岐阜大


2005年10月25日

抜いた後の親知らずから、欠損した体の組織再生に利用できる「間葉系幹細胞」を採取し、大量に培養する研究に、岐阜大学医学部のグループが取り組んでいる。親知らずは多くの場合、医療廃棄物として捨てられているのが現状で、廃棄物の有効利用としても注目されそうだ。

研究に取り組んでいるのは、柴田敏之教授(口腔(こうくう)病態学)、手塚建一助教授(再生医科学)、畠山大二郎助手(口腔病態学)。

骨髄などに含まれる間葉系幹細胞は、脂肪や骨などいろいろな体の組織になる性質を持っており、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や重い骨折などで骨の形成を促す際などに用いられる。広島大学などが下あごの骨髄から間葉系幹細胞を採取し、培養する研究に取り組むなど、世界中で研究が進められている。

柴田教授らの方法では、親知らずの内部にあるシリコン状の歯髄や、完全に生える前の親知らずの表面を包んでいる歯小嚢(しょうのう)を使う。

歯並びの矯正などの治療を受けた患者から、研究で使うことを断ったうえでもらい受けた親知らずを細かく刻み、間葉系幹細胞を採取する。

この方法で採取された間葉系幹細胞は、1~2週間で約1万倍に増殖させることができる。親知らずは生えていこうとする「勢い」を持っているため、柴田教授は「骨髄から採取した間葉系幹細胞よりも活性度が高い」と指摘する。

また、零下180度ほどの液体窒素で親知らずを凍結させれば、半永久的に保存することもできる。現在、約30人分の親知らずから間葉系幹細胞の培養を行っており、歯の保存状態が良ければ、ほぼ100%の確率で採取が可能だという。

〈キーワード・間葉系幹細胞〉 人の骨髄の中に存在し、骨や筋肉、靭帯(じんたい)などの細胞に分化する働きを持っている。このため、骨粗鬆症や重度の骨折の治療などに使われるケースもある。細胞の採取は比較的容易で、培養技術に関する研究が世界的に進められている。また近年では、心筋や神経細胞に分化する可能性も指摘されており、再生医療の分野で注目されている。

 

《朝日新聞社asahi.com 2005年10月25日より引用》

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です