20051005

米国産牛肉、輸入再開へ BSE「可能性低い」


2005年10月05日03時02分

牛海綿状脳症(BSE)確認以降、輸入停止となっている米国産とカナダ産牛肉を、生後20カ月以下の牛に限って検査なしで輸入することの安全性について、食品安全委員会のプリオン専門調査会(座長・吉川泰弘東大教授)は4日、「食肉への汚染の可能性は、非常に低い」と評価する方向で大筋合意した。11月にも、安全委として正式な結論を出す。これを受け、政府は輸入再開の手続きを進め、早ければ年内にも輸入を再開する可能性が高まった。

政府はBSEの病原体が検出されにくい生後20カ月以下の牛肉については検査なしで輸入を認める方針を打ち出し、5月に安全性について安全委に諮問した。同委員会のプリオン専門調査会でこれまで7回審議してきた。

4日の審議では、安全性の評価をまとめた座長案をもとに、検査なしで輸入した生後20カ月以下の米国産、カナダ産牛肉と国産牛肉の病原体の汚染度について比較した。

座長案では、米国、カナダの飼料規制に不備があり、長期的にみるとBSE感染牛は今後も発生すると指摘。20カ月以下のBSE感染牛が日本では今後年間1~2頭、米国では32頭、カナダでは22頭出ると推計した。

しかし、日本に比べて飼育頭数が米国は約20倍、カナダが約3倍あるため、100万頭あたりの感染牛は米国の方が「日本よりやや少ない」、カナダは「日本と同等」と分析。輸入対象の20カ月以下では病原体が検出されにくく、病原体がたまる脳や脊髄(せきずい)などの特定危険部位もすべて除去されるとすると、米国産、カナダ産牛肉の汚染は「非常に低い」と評価した。

また、胃や肝臓など内臓は危険部位が適切に除去されていれば、「非常に低い」とした。月齢の判別方法の難しさを指摘したうえで、輸入は条件付きで一部可能との含みを残した。

20カ月以下をどう区別するかについて、米国側は、肉質による判定や出生証明で十分可能としていた。日本側には、米国の月齢の判別方法やBSE対策の徹底に疑問もあった。しかし、政府の諮問はこうした対策が守られることが前提になっていた。調査会では、審議の進め方に異論もでたが、最終的には実態を評価することには踏み込まなかった。厚生労働省や農林水産省が実効性の確保に責任を持つよう最終評価に盛り込む方向だ。

米国では、放牧して育てるため、出生日が特定できない牛が多い。しかし、最近は飼育管理をきちんとすることで、月齢を書面で証明できる牛が増えている。厚労省は日本向けの牛肉処理工場に検査官を派遣し、輸入停止前よりも態勢を強化する方針だ。

正式な結論は次回以降に持ち越されたが、答申の骨格がまとまったことで、審議は月内で終了する見込みとなった。その後、4週間かけて一般から意見募集をする。安全委の答申を受け、政府は米国側と最終的な協議をしたあと、輸入再開に踏み切る。

 

《朝日新聞社asahi.com 2005年10月05日より引用》

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