韓国にES細胞バンク設置へ ソウル大など研究促進狙う
2005年09月10日
人クローン胚(はい)からの胚性幹細胞(ES細胞)作製に世界で初めて成功した韓国ソウル大などのチームが、国際的なES細胞バンクの設置を準備していることが分かった。内外の再生医療研究者らに作製した細胞を提供する。世界に先駆けて、人のクローンES細胞を提供することも検討している。提供の条件など詳細を10月にも決定する。再生医療研究を促進するとともに、国際的なセンターとしての地歩を築くことになりそうだ。
黄禹錫(ファン・ウー・スク)ソウル大教授らのチームは今年5月、ボランティアから提供された未受精卵の核を除去、そこに脊髄(せき・ずい)損傷患者らの皮膚細胞の核を移植してクローン胚をつくり、それを基にES細胞を作製した、と発表した。患者本人の核を使ったクローンES細胞から、再生医療用に必要な組織や臓器をつくることができれば、拒絶反応が避けられると期待されている。
同チームの安圭里(アン・キュ・リ)ソウル大教授ら関係者によると、ES細胞バンク構想は、海外の多くの研究機関と連携し、研究を促進するのが目的だ。安教授は「クローンES細胞づくりで一定の成果が得られた。今後、患者の状態に応じて、必要な組織、臓器にES細胞を分化させる方法を開発するために、多くの研究者に参加してほしい」と述べた。
韓国生命工学研究院によると、韓国にはクローンES細胞のほか、人の通常の受精卵からつくったES細胞株も、すでに35株あるという。
受精卵からの人ES細胞については、英国に内外の研究者に提供するための公的バンクがあり、日本でも国内の研究者向けバンクが整備されつつある。
アジア太平洋地域のES細胞研究ネットワーク計画を進めている京都大学再生医科学研究所所長の中辻憲夫教授は「クローン胚からのES細胞が研究者に提供されるのなら、世界でも唯一の取り組みになる。ただ、提供条件などによって、研究者の利用しやすさが決まる」といっている。
国内の人クローンES細胞の研究は、文部科学省が指針づくりの作業中だが、問題点の絞り込みに時間がかかり、実現のめどが立っていない。研究者からは「日本で作製が認められないならば、せめて提供を受けられるようにしてほしい」との要望も出ている。指針でどう対応するかも今後の焦点だ。
《朝日新聞社asahi.com 2005年09月10日より引用》