ES細胞、培養続けると異常 米の研究グループ発表へ
2005年09月05日
様々な組織の細胞になりうるヒトの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)は、培養を続けるうちにがん細胞で起こるような異常が生じることを米ジョンズホプキンス大などのグループが見つけた。米科学誌ネイチャー・ジェネティクス電子版で5日発表する。ES細胞は再生医療への応用が期待されるが、長く培養すると臨床応用には使えなくなるものがあるだろうという。
グループは、ヒトのES細胞9株について、増えると別容器に分けて培養する操作を22~175回繰り返し、元の状態と比較した。9株中8株で、がん化や老化に伴って起こる異常が増えていた。
具体的には、メチル基という物質がDNAにくっつく変化や、DNAの特定領域がコピーしたように増える変化、ミトコンドリアDNAの変異などが確認された。こうした異常で、遺伝子が働くかどうかのスイッチ制御が異常になったり、がん遺伝子など特定の遺伝子が増えたりする可能性がある。これまで、ES細胞は長期間培養を続けても安定しているとされてきた。
長期間培養する場合には、高い感度の検査を定期的に行う必要があるとグループは指摘する。米政府は01年8月以前につくられたES細胞株による研究に限り政府資金投入を認めているが、こうした方針では限界が生じる可能性を示した。日本は条件付きでES細胞の新規作製を認めている。
《朝日新聞社asahi.com 2005年09月05日より引用》