マウスゲノムの70%に重要な機能 理研など解析
2005年09月02日
マウスの遺伝情報全体(マウスゲノム)の大半が無駄と思われていたが、全体の長さの約70%が、遺伝子を調節するなど、細胞内で利用されていることを理化学研究所などの国際研究グループが解明した。人でも同様の仕組みがあると考えられ、たんぱく質を作る遺伝子を主体に説明する従来の生命観を覆す成果になる。2日付の米科学誌サイエンスに発表する。
マウスゲノムは約30億個の塩基がつながるDNAで構成される。従来、約30億個の約2%が最終的にたんぱく質になる設計図で、残る約98%は意義が謎で、「無駄」との見方もあった。
たんぱく質の設計図である遺伝子が働くには、細胞の核にあるDNAから遺伝情報がいったんリボ核酸(RNA)にコピーされ、その情報をもとにたんぱく質が合成される。人では、たんぱく質を作る遺伝子は約2万2000個とされる。
理研ゲノム科学総合研究センターの林崎良英氏らが、マウスの細胞で作られているRNAを詳しく調べた。たんぱく質を作る遺伝子の領域が2万929個あり、たんぱく質を作らないがRNAを作る遺伝領域2万3218個が新たに見つかった。これらを合わせて、何らかに使われている領域はマウスゲノム全体の長さの約70%に達した。
たんぱく質を作らない遺伝領域のRNAを調べると、他の遺伝子の働きを調節するものがあることも分かった。たんぱく質を作らないRNAが、生命活動の重要な役目を担っていることになる。理研グループは人にも同様の遺伝子調節の仕組みがあるとみている。新たに見つかった遺伝領域は、例えばがんに関連する遺伝子を調節するなど、医薬品開発の新たな目標になりうるという。
《朝日新聞社asahi.com 2005年09月02日より引用》