20050901

チンパンジーのゲノム概要解読 ヒトの能力解明手がかり


2005年09月01日

ヒトに最も近い生物、チンパンジーの全遺伝情報(ゲノム)の概要を米国のチームが解読した。ヒトのゲノムと比較すれば、知性などヒト独特の能力を解明する手がかりとなるが、すでにヒトとチンパンジーの間で進化の様子が違う遺伝子の候補などもあり、今後の研究が期待される。この成果は1日発行の科学誌ネイチャーに発表された。

米国のブロード研究所、ワシントン大などのチームが、飼育下で生まれた雄チンパンジー「クリント」から取ったゲノムを調べた。ヒトとチンパンジーがその共通祖先から分かれたのは今から600万年ほど前とされ、両者のゲノムの違いは、その後の突然変異と自然淘汰(とうた)で生じた。

研究結果によると、ヒトとチンパンジーのゲノムの違いは4%ほど。このうち、遺伝情報を示す文字にあたる塩基が一つだけ違うのはゲノム全体の1.23%だった。これは、すでに日本のグループが示しているのと同じだ。一方、複数の塩基がまとまって入り込んだり欠けたりしているのは全体の3%ほどだった。こうした違いの中に、ヒトとチンパンジーが違う原因が含まれていることになる。

今回の結果は正確さが99%程度の概要で、まだはっきりしたことはいえないが、調べられた遺伝子の中には、ヒトとチンパンジー双方で突然変異が起きやすく環境適応に役立つと考えられるもの、チンパンジーよりヒトの方が進化が速いものの候補も見つかった。ヒトにあり、チンパンジーで失われるなどした遺伝子も50以上見つかった。

チンパンジーゲノム解読では、日本の理研グループが昨年も、チンパンジーの22番染色体について、より正確な解読データをネイチャー誌に発表した。

 

《朝日新聞社asahi.com 2005年09月01日より引用》

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