受精卵なし「ES細胞」、米大学が作製 臓器移植に期待
2005年08月23日
さまざまな組織になりうる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)と、皮膚細胞を融合させることで、ES細胞と同じ能力を持つ新しい細胞をつくることに、米ハーバード大の研究チームが成功した。この方法で患者自身の細胞を使えば、新たに受精卵を壊さなくても、拒絶反応を起こさないような臓器や組織を再生し、移植できるようになる可能性がある。
26日付の米科学誌サイエンスに論文が掲載される予定だったが、米メディアの注目を集めたため、同誌は急きょ論文をメディアに公表した。
研究チームは、ES細胞と皮膚細胞を融合させて細胞をつくり、神経や筋肉、消化管などの細胞に分化することを確認した。
この融合細胞は皮膚細胞とES細胞の両方の遺伝情報を持つ。ES細胞側の遺伝情報を取り除くことができれば、拒絶反応を起こさないようにできる可能性があり、患者への移植に利用できるかもしれないと研究チームは期待している。
通常のES細胞は、受精卵を壊してつくる必要があり、患者に移植できるようにするためには、クローン胚を使う必要があった。このクローン胚を子宮に移植すればクローン人間につながることから、倫理面での課題があり、欧米を中心に慎重論がある。韓国では今年、患者の皮膚の細胞を使って、ES細胞をつくることに成功している。
《朝日新聞社asahi.com 2005年08月23日より引用》