茨城で鳥インフルエンザ 弱毒性、半径5キロ出荷停止
2005年06月26日23時11分
農林水産省と茨城県は26日、同県水海道(みつかいどう)市の採卵養鶏場「アレバメントカントウ」の鶏から、高病原性鳥インフルエンザ・ウイルス(H5N2型)が検出されたと発表した。農水省によると、毒性が弱く、感染した鶏の致死率も低い。しかし、強毒性に変異する可能性があり、県は26日、家畜伝染病予防法などに基づき、半径5キロ圏内にある農場の鶏や鶏卵の出荷・移動禁止を命じた。農水省は発生元の農場から出荷済みの卵については、「出荷時に洗浄されるため、安全性に問題はない」として回収しない。
高病原性鳥インフルエンザは04年、山口、京都、大分の3府県の計4農場で確認され、いずれも今回とは異なり、強毒性だった。
県などによると、今回の養鶏場は鶏約2万5000羽を飼育している。今年4月に計308羽が死に、5月にも268羽が死んだ。このため5月23日、経営者が民間の検査機関に分析を依頼。6月24日に「鳥インフルエンザの疑い」との検査結果が出たのを受けて、検査機関が県に報告した。
農水省と県があらためて検査したところ、弱毒性の高病原性鳥インフルエンザであることが判明した。国内で弱毒性の高病原性鳥インフルエンザが発生したのは初めて。同法などの規定により、県は27日以降、この農場の鶏と鶏卵をすべて処分する。
鶏と卵の移動禁止の対象は、この農場のほかに16農場(計約71万羽を飼育)ある。これらの鶏卵は農場の安全が確認されれば、出荷できるようになる。
県は25日、発生元の農場のほか、仕入れ先や周辺の養鶏場の鶏も調べたが、現段階では病気特有の症状は認められなかった。今後、さらにウイルス検査などをして、鳥インフルエンザの感染期間や範囲の特定を進める。
農水省の釘田博文衛生管理課長は26日の記者会見で、4月に鶏が死んでからウイルス確認までの経緯について、「事実関係を検証したい。感染源に関しては、断定的なことは申し上げられない」と話した。
厚生労働省は、今回のウイルスが人に感染する可能性は極めて低いとみている。鶏に触れた可能性のある従業員のうち6人から聞き取り調査をしたが、異常はなかった。今後、従業員に対し、保健所で詳しい健康診断を受けるよう求める。さらに、近隣の農場には、従業員が感染しないよう防疫体制の強化を促す。
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〈キーワード・鳥インフルエンザ〉 鶏やアヒル、ウズラ、七面鳥などの鳥類が感染するインフルエンザでA型のウイルスが原因。感染した鳥が死ぬなど、特に強い病原性を示す「高病原性」は家畜伝染病予防法の法定伝染病に指定されている。国内では04年1月、山口県内の養鶏場で79年ぶりに確認された。強毒性の場合、多臓器不全などを起こし1~2日で死ぬなど大量死を引き起こす。鶏卵や鶏肉を食べた人に感染した例は報告されていない。
《朝日新聞社asahi.com 2005年06月26日より引用》