TPP超す要求、日本警戒 米通商代表候補「第一の標的」
2017年03月16日
トランプ政権の通商交渉を担う米通商代表部(USTR)代表に指名されたロバート・ライトハイザー氏が14日、日本の農業分野の市場開放を「第一の標的」として最重視する方針を示した。ほかの政権高官からも、日本との二国間交渉に前向きな発言が相次いでおり、4月に始まる日米経済対話を控え、日本政府に警戒感が強まっている。
「農業の市場開放で第一の標的は日本だ」
ライトハイザー氏は14日、米議会上院の公聴会でそう訴えた。トランプ大統領が離脱を決めた環太平洋経済連携協定(TPP)の参加国と「いくつもの二国間協定を進めたい」としたうえで、「これまで交渉されたものを改善したい」と述べ、TPPを上回る協定をめざす考えを示した。
背景には、畜産などの農業団体が日本などとの二国間交渉を急ぐよう求めていることがある。TPPでは、重要市場である日本と牛肉や豚肉の関税引き下げで合意していたが、TPP離脱でその恩恵を受けられなくなったからだ。トランプ氏は自動車など日本からの輸入に注文をつけていたが、日本への輸出についても要求を強めることになる。
トランプ政権の通商政策を担う閣僚は、日米二国間交渉への意欲を隠さない。ロス商務長官は10日の記者会見で、日本との二国間協定は「とても高い優先度になる」と指摘。政権の貿易政策を担う国家通商会議(NTC)のナバロ議長も6日の講演で、「北米自由貿易協定(NAFTA)加盟国のメキシコや、日本、英国といった同盟国との交渉を手がける」と語った。
TPP交渉で、もともと米国は関税撤廃を求めていただけに、二国間交渉になれば再び厳しい要求を突きつけてくる可能性が高い。
ライトハイザー氏の発言を受け、日本の農林水産省幹部は「TPP以上の譲歩はできない」と身構える。
菅義偉官房長官は15日の記者会見で、「先日の日米首脳会談における一連の会談で、米国からそのような要請はなかった」と強調した。先月の首脳会談で決めた麻生太郎副総理とペンス副大統領による日米経済対話で、両国の経済協力を中心にした議論に持ち込み、本格的な通商交渉を避けるねらいだ。
だが、米国の強硬姿勢が明らかになるにつれ、日本政府内からも「経済対話も、米国が二国間の通商交渉を求めてきたら決裂しかねない」(財務省幹部)との懸念も出ている。(五十嵐大介=ワシントン、野口陽)
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日本の貿易に関するトランプ政権高官の発言
《朝日新聞社asahi.com 2017年03月16日より抜粋》