BSE全頭検査、20カ月以下を除外 安全委が緩和容認
2005年03月28日21時35分
牛海綿状脳症(BSE)の国内対策見直し案を審議している食品安全委員会プリオン専門調査会は28日、全頭検査の対象から生後20カ月以下の牛を除外する新たな基準を容認することで合意した。31日にも開かれる食品安全委にも報告され、夏には新基準が適用される見通し。米国産牛肉の輸入の前提となっている国内対策見直しの決定で、再開に向け一歩前進したことになる。今後は、米国産牛肉の安全性の評価に移るが、内容は国内対策以上に難しく、再開時期は不透明だ。
03年12月から輸入が止まっている米国産牛肉について日米両政府は昨年10月、20カ月以下の牛を検査なしで輸入再開することで基本合意し、全頭検査の緩和がその前提条件になっていた。
調査会では、昨年10月に出された全頭検査の見直し案について健康への影響を検討。現在の全頭検査を生後21カ月以上に緩和した場合に、人に対する感染リスクがどう変化するかを評価した。
その結果、BSEの感染源となる肉骨粉の使用禁止などの飼料規制などで、生後20カ月以下の牛での病原体「プリオン」の蓄積量が「少ない」と判断。特定危険部位も除去されており、検査を緩和しても「食肉への汚染量は無視できるか、非常に少ない」とした。
また、これまで欧州や日本で確認された感染牛の数や月齢などから、生後20カ月以下の牛の中に含まれる感染牛は年間2頭以下と試算した。
その場合でも、(1)全頭検査の精度に限界があるため、感染牛を発見できない(2)見つけられたとしても、最大1.62頭以下にすぎず、特定危険部位の除去や水による洗浄などの対策で、病原体が牛肉に残る恐れは極めて低いとした。
これらから、検査見直しによる健康へのリスクの増加は「非常に低い」と結論づけた。
同調査会の審議は昨年10月からスタート。その直前に食品安全委が出した全頭検査の緩和を容認した報告書の文面調整の過程で事務局への不信感を持つ委員もおり、議論は紛糾していた。
今後、一般から4週間かけて意見を募集し、政府に答申、検査内容を定めた省令が早ければ6月にも改正される。ただ、政府は全頭検査を望む自治体には3年間費用を全額補助する方針で、国内では事実上、全頭検査は継続される。
今後、焦点は米国産牛肉の輸入条件についての議論に移る。20カ月以下の牛肉であることをどう担保するのか。安全性などを政府が5月にも食品安全委に諮問する。
委員会には「国内対策の議論以上に時間がかかる」との見方もでており、審議が長引くようでは、対日圧力はさらに高まるとみられる。
《朝日新聞社asahi.com 2005年03月28日より引用》