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英国で感染か、国内初の変異型ヤコブ病を確認 厚労省


2005年02月04日

ヤコブ病について開かれた専門家の委員会。中央は北本哲之委員長=4日午後、厚労省で

ヤコブ病について開かれた専門家の委員会。中央は北本哲之委員長=4日午後、厚労省で

厚生労働省は4日、牛海綿状脳症(BSE)の牛の脳や脊髄(せきずい)などを食べると感染するとされる、「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」(vCJD)の患者が確認されたと発表した。患者は日本人男性で、40歳代で発病し昨年12月に死亡した。国内での患者発生は初めて。89年に1カ月間ほど英国に滞在しており、厚労省は「現時点では英国で感染した可能性が有力」とみている。

厚労省は、変異型ヤコブ病について、「通常の生活で人から人へは感染せず、二次感染を心配する必要はない」と呼びかけている。また、英国滞在歴があり、不安な人に対応するため、省内に相談窓口を設置、各都道府県にも対応を要請した。

感染者の献血血液で感染する心配があるため、これまで欧州に6カ月以上滞在していた人から献血を受け付けなかった制限を、英国に限って1カ月以上にすることにした。また今回の事態が、国内の牛肉消費や、米国産牛肉の輸入再開問題へ影響する可能性もある。

厚労省では同日、専門家による厚生科学審議会疾病対策部会クロイツフェルト・ヤコブ病等委員会(委員長、北本哲之・東北大教授)で、死亡した患者の病理検査結果などをもとに、全員一致で変異型と確認した。

厚労省などによると、この男性は01年12月に、焦燥感やイライラなどの精神症状を発症。02年12月ごろ、ヤコブ病の疑いが濃くなった。意思に関係なく体が動く不随運動が出るなど症状が進行。その後、刺激への反応が全くなくなり、04年12月に死亡したという。

全国のヤコブ病発生状況を把握するサーベイランス委員会は04年2月、主治医からの報告で、症状を調査。英国の専門機関に相談するとともに、脳波検査で「変異型」では見られない所見が確認されたことなどから、04年9月に最も多い原因不明のタイプ(孤発例)といったんは判断した。

しかし、死亡後の病理検査で脳内に特有の沈着物があり、BSEの確認方法で使われている検査の結果なども踏まえ「変異型」と診断された。

厚労省は、英国で感染した可能性が高いとみる理由に、(1)感染者の多くは、英国人か英国滞在経験者(2)男性患者が滞在した89年ごろはBSEが英国で多発していた(3)日本でBSEが最初に確認されたのは、患者が発症する3カ月前の01年9月で潜伏期間としては短い、などを挙げている。

これまでの欧州以外の感染者は英国に数年滞在した例がほとんどで、1カ月という短期間での感染は例がないという。

サーベイランス委員会は今後、患者の詳しい行動歴や食習慣などを家族から聴きとり、感染経路の確定作業を進めるほか、入院時の二次感染の可能性などについて、調査を続けるという。

一方、厚労省食品安全部は、全頭検査から20カ月齢以下の牛を除外することを柱としたBSE国内対策の見直し方針について、現段階で変更する考えはないとしている。

(05/02/04 22:04)

 

《朝日新聞社asahi.com 2005年02月04日より引用》

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