異常プリオン、腎臓や肝臓にも蓄積 マウス実験で判明
2005年01月21日
牛海綿状脳症(BSE)の原因とされる異常プリオンが、慢性炎症のある腎臓や肝臓、膵臓(すいぞう)にも蓄積される恐れのあることがマウスの実験で分かった。スイス・チューリヒ大などのグループが、21日付の米科学誌サイエンス電子版で発表する。牛や羊ではなく食の安全に直ちに影響するわけではないが、脳や脊髄(せきずい)など危険部位以外への蓄積で注目される。
異常プリオンは脳や神経・リンパ組織で増え、BSEや羊のスクレイピー、人のクロイツフェルト・ヤコブ病を引き起こすとされる。
研究グループは、このプリオンがリンパ組織を介して運ばれる点に着目。臓器に炎症があるとリンパ球などが集まることから、腎、肝、膵臓に慢性炎症を人為的に起こしたマウスに、感染羊の脳組織を注射し、異常プリオンの発生を調べた。
その結果、どの炎症マウスでも、通常の感染で脳に現れるより数十日程度早い60~100日で、炎症のある臓器で異常プリオンの増殖が確認された。慢性炎症のないマウスでは見られなかった。
国立精神・神経センター神経研究所の金子清俊・疾病研究第7部長の話 非常に重要な研究だ。動物の臓器の慢性炎症は目で確認できないだけに気になる。現時点で食の安全に対して基本的な考え方を変える必要はないだろうが、牛や羊などにどれくらい影響するのか、今後の重要な検討課題になりそうだ。
(01/21 06:04)
《朝日新聞社asahi.com 2005年01月21日より引用》