20170311

(惜別)正田陽一さん 東京大学名誉教授・畜産学者


2017年03月11日

■動物園ボランティア、会員番号1

2016年12月30日死去(脳出血) 89歳

 

東京大農学部へ通勤するのに毎日、上野駅で降りて歩いた。途中、上野動物園内を通り抜け、クモザルやヒヒなどと顔なじみになった。ボランティア組織を作りたいという動物園の提案を喜んだに違いない。大手を振って出入りできると。

1974年に「東京動物園ボランティアーズ」が発足。動物好き30人で動物の解説ガイドに取り組んだ。日本初の試みだった。

ボランティアから動物園に就職した人も少なくない。本田公夫さん(58)はニューヨークの動物園で働く。「先生から動物、絵画や文芸、お酒、人生のあらゆることを教わりました」

東京動物園協会の役員に就いてボランティアを離れた間も資料室に通い続けた。ニホンザルの体重の季節変化を追いかけ、全国のサル山を調査し、「サル山研究家」と呼ばれた。元上野動物園長の斎藤勝さん(78)は「動物園や動物の情報が実に早く、何でもよくご存じでした」と話す。

2004年、ボランティアーズ会長として復帰した。温厚な人柄と存在感にひかれて会員も増え、上野と多摩動物公園、井の頭自然文化園の3カ所で計700人に。東京以外にも数十カ所の動物園に広がった。

会長退任後も動物園通いはやめなかった。昨年11月末、ボランティアーズ庶務担当、山本祥子さんが病床を訪れた。新しい会員証「会員番号0001」を手渡すと、満面の笑みを浮かべたという。それを胸に旅立ったのだろうか。

(元朝日新聞記者・清水弟)

しょうだよういち

 

【写真説明】

動物をみると、手を近づけ反応や行動を確認した=2015年10月、上野動物園、さとうあきらさん撮影
《朝日新聞社asahi.com 2017年03月11日より抜粋》

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