20170223

飼料用米「耕畜連携」し拡大 コメと畜産、双方の農家に利点 /東北・共通


2017年02月23日

◆みちのく経済

 

飼料用米の作付けが拡大している。国がコメ農家に助成金を給付する現在の制度を導入した2010年度から16年度にかけて、東北6県では5倍以上増えた。コメ農家と畜産農家の「耕畜連携」に取り組む動きもある。

 

昨年6月、山形県天童市にコメを与えて育てた和牛の精肉店がオープンした。約1千頭を飼う畜産会社「和(なごみ)農産」の直営店。扱う牛は、飼料として栽培されたコメを与えて育てたという。矢野仁社長(55)は「トウモロコシなど家畜の配合飼料の原料は輸入頼み。なるべく顔の見える身近な農家が作っている農作物を使いたかった」と話す。

同社では、県内の農協や業者から、収穫後に乾燥させた飼料用米を1キロあたり20円程度で購入し、工場で加熱したり蒸したりして加工した後、国産の麦や大豆などと混ぜて牛に食べさせている。

さらに消化機能を安定させるため、収穫後のもみ米をそのまま砕き、発酵させてつくったソフトグレインサイレージ(SGS)も与える。SGS用の飼料用米は、地元の天童市や山形市のコメ農家ら28戸で作る飼料用米研究会から同5~6円で直接買い取っている。

研究会の会長、押野弘行さん(46)は山形県の主力品種「はえぬき」や「つや姫」など計約25ヘクタールを手がけている。

「SGS用のコメは、もみすりや乾燥作業がいらない。農家は大助かりだ」と押野さん。飼料用米は食味を重視する必要がないため、主食用米の収穫期とずらして作業ができる利点もあるという。

 

■作付けの頼みは手厚い助成金

和農産と研究会の連携は今年で3年目。支えているのは国の手厚い助成金制度だ。

飼料用米を作付けする農家は10アールあたり収量に応じ5万5千円~10万5千円がもらえる。研究会ではSGS用の飼料用米をつくり、同8万円を受け取っている。ほかに飼料用米専用の品種を栽培すると同1万2千円、「耕畜連携」として不要になった稲ワラを畜産業者に提供すれば同1万3千円。こうした助成金の後押しで、研究会全体で手がけるSGS用の水田は今年度は計約42ヘクタールになった。1年目の10倍以上に増えたという。

飼料用米の活用は養豚や養鶏でも広がっている。作付面積は全国的に急増中。だがその一方で、飼料用米づくりは助成金頼みの側面もある。

農林水産省は15年度に28%(概算値)だった飼料自給率を、10年後に40%まで上げる目標を掲げる。トウモロコシなどの輸入穀物が主原料の配合飼料の価格が上昇している事情もある。農水省穀物課の担当者は「コメ離れは続いており、生産調整(減反)がなくなる30年度以降も需要に応じた作付けが必要になる。今後も飼料用米の作付けを支援していく」と説明している。(井上潜)

 

【写真説明】

飼料用米と稲ワラを混ぜたエサを与える=山形県天童市

【図】

東北6県の飼料用米の作付面積の推移
《朝日新聞社asahi.com 2017年02月23日より抜粋》

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