20170222

(変わる農力)「ワインビーフ」ブランド化に力 農家で作る東備畜産研究会 /岡山県


2017年02月22日

ワイン用のブドウの搾りかすを牛のエサに――。赤磐市などの畜産農家で作る東備畜産研究会が、地元の資源を活用し、「東備ワインビーフ」のブランド化に取り組んでいる。昨秋にはイベントで販売。地域の資源を生かした特徴ある肉を目指す。

 

世界的な穀物需要の増大などで輸入飼料が高騰し、畜産農家の経営悪化が懸念されるため、会は、地域で調達できる飼料の活用を模索。地元のワイナリーから出るブドウの搾りかす「ワイン粕(かす)」に目をつけた。2012年度から、ワイン粕を乳酸菌で発酵させて飼料として使い始めた。ブドウの産地山梨や、高級牛肉の産地兵庫などでもワイン粕飼料を使ってブランド化している。

研究会では現在、2戸の農家が、ワイン粕を使っている。そのうちの1戸は、研究会の会長、赤磐市の友次康之さん(61)。牛舎に置かれたワイン粕の飼料の入った袋は、甘酸っぱいにおいがする。

牧場では約100頭の牛を飼育しており、肉用に育てている和牛、和牛と乳牛の交雑種、乳牛のすべてにワイン粕の飼料を与えている。ワラや配合飼料の上にまく、いわば「ふりかけ」だ。

友次さんは、「牛の嗜好(しこう)性はよく、エサ全体をよく食べるようになった」と効果を話す。よく食べ、牛が健康になるため、体の大きな牛になるという。もう1戸の岸本牧場(岡山市東区)では、乳用種に与えている。現在、2戸で年間約40トンを使う。

課題は、ワイン粕に含まれるビタミンAの影響で、サシ(脂肪交雑)が入りにくいことという。現在は、きめ細かなサシが入るほど市場の評価が高いため、サシが入らないと、評価が下がる。

そこで、会は、ワインのイメージと、地域の飼料を使うという物語を生かして、消費者への直売で活路を見いだせないかと模索している。新たなブランドを「東備ワインビーフ」と名付け、ワイン粕飼料を1頭あたり1日1キロ以上、3カ月以上与えることとした。また、稲ワラなど地域の飼料もできるだけ使う。

昨秋の赤磐市の「あかいわ祭り」で、交雑種の牛肉を試験販売。試食もした。備前県民局によると、「脂が甘くておいしいというお客さんもいた」という。約200パック(400グラム入り)が売れた。

「脂肪は少ないが、脂の質は、ええんじゃないかな。おいしいと思う」。友次さんもそう評価する。

まだ生産量が少なく、継続的な販売は難しいが、秋のイベント以外にも直接販売を目指している。

(西江拓矢)

 

【写真説明】

ワイン粕を発酵させた飼料を手にする友次康之さん=赤磐市多賀

認証マーク=中央畜産会提供
《朝日新聞社asahi.com 2017年02月22日より抜粋》

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