(eco活プラス)「残り物」、飼料に活躍 パンの耳・うどん…肉質アップ
2017年02月21日
食品製造や調理の際に出る「残り物」は、古くから家畜の飼料として使われてきた。特にここ10年ほどは「エコフィード」と呼ばれ、活用が広がっている。価格の安さや、環境への配慮をアピールできるメリットだけでなく、使いかた次第で、こだわりの肉の味につながるとして重宝されている。
愛知県豊橋市の「ホテルアークリッシュ豊橋」では、ブランド豚「三州(さんしゅう)豚」のベーコンやハムをレストランで提供している。ハムをいただくと、肉厚で脂はあっさり。総料理長の今里武さんは「脂に甘みがあって、おいしいと評判です」と話す。
三州豚のエサは、食品の製造過程で出る残り物だ。三州豚を生産するトヨタファーム(本社・愛知県豊田市)の農場を訪ねると、飼料置き場にサンドイッチを作る際に出たパンの耳が積まれていた。一部が欠けて売り物にならなかったビスケットなどを加え飼料にする。
同社がこだわっているのは、小麦が原材料のものを使うことだ。植物性の飼料は豚肉のサシ(霜降り)が増えたり、くさみが減ったりするという。鋤柄(すきがら)雄一代表は「残り物と聞くとイメージが良くないかもしれない。でも、こだわれば味がよくなる」と話す。
農林水産省によると、食品製造業の廃棄物の発生量は1606万トン(2014年度)。パンくずなどのほか、角が欠けている、販売する際の表示よりも量が少ないといった理由で廃棄されるものもある。
「まだ食べられるものも捨てられてしまい、もったいない。ひと工夫すれば資源になる」。トヨタファームなどに飼料を出荷する環境テクシス(同県豊川市)の高橋慶社長は話す。
08年にエコフィードを作り始めた。バウムクーヘンの切れ端やあめ玉、うどん、パン粉など約10~20種を年間約3千トン仕入れ、飼料にしている。配合や量を畜産農家と話し合うなどしながら、肉質を向上させているという。
農水省によると、エコフィードという名称が使われ始めたのは05年ごろ。製造業者は349社(16年5月現在)で、10年間で2倍になったという。エコフィードを飼料にした牛肉や豚肉、鶏肉、卵がスーパーなどに流通している。
さらに認知度を上げようと、畜産農家を支援する中央畜産会はエコフィードの認証制度を6年前に始めた。飼料の栄養成分を把握しているかや、原料の保管や運搬の際に品質管理ができているかなど、一定の基準を満たせば安全だとして、容器などにマークを表示できる。現在、豚肉や鶏卵など8銘柄が認証を受けている。農水省と中央畜産会は、取得を目指す業者向けに勉強会を開くなど支援をする予定。同省飼料課の担当者は「消費者の目にとまるよう、認証制度を広げていきたい」と話している。(富田洸平)
<eco活の鍵>
中央畜産会では、エコフィードを使った先進事例を表彰している。昨年度はブランド豚を育てている千葉県の業者や、おからなどから飼料を作り乳牛や肉牛を育てている島根県の業者などが選ばれた。詳しくは中央畜産会のサイト(http://ecofeed.lin.gr.jp)で確認できる。
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eco活(エコカツ)プラス
【写真説明】
エコフィードを食べて育つ「三州豚」=愛知県田原市
エコフィードになるバウムクーヘンの切れ端
エコフィードになるあめ玉。溶かして液体にして使うという=いずれも愛知県豊川市
認証マーク=中央畜産会提供
《朝日新聞社asahi.com 2017年02月21日より抜粋》