受精卵診断、公開倫理委で初承認 慶応大の重い遺伝病例
2004年07月13日
子どもが遺伝性の病気になる可能性を受精卵の段階で調べる受精卵診断について、日本産科婦人科学会は13日、東京都内で公開の倫理委員会(委員長・田中憲一新潟大教授)を開き、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの子どもが生まれる可能性がある夫婦について実施を求めていた慶応大の申請を認めた。23日に臨時理事会を開き、正式決定する。学会が受精卵診断の実施を承認するのは初めてだ。
同学会は98年、受精卵診断について「重い遺伝性の病気に限り、個別に審査して認める」との会告(指針)を定めた。その後2施設から申請があったが、いずれも承認していなかった。
デュシェンヌ型筋ジスは子どものうちに発症して30歳ごろまでに命を失うことがある。生命にかかわり成人前に発病する病気を現時点での「重い病気」と定義した小委員会の見解を、倫理委は支持。慶応大の申請例はこれに該当し、倫理面や技術面でも問題ないと判断した。
ただ、病気につながる遺伝子を修復する治療法が開発されつつあるとして、将来有効な治療法となる可能性を夫婦に説明することを条件とした。
一方、名古屋市立大が申請した筋緊張性ジストロフィーをめぐる受精卵診断は、重い遺伝病にあたらないとして認めなかった。
慶応大の申請をめぐっては倫理委の小委員会が6月18日、承認の答申を倫理委に提出。受精卵診断には「命の選別につながる」などの批判があることから、学会はその後2回の倫理委員会を異例の公開にして議論した。
今年2月には神戸市の医師が、学会に無申請で3例の受精卵診断を実施したことが明らかになっている。
(07/13 20:19)
《朝日新聞社asahi.com 2004年07月13日より引用》