ヒトクローン胚作り容認 条件整備、行政指針で対応
2004年07月13日
国の総合科学技術会議の生命倫理専門調査会(会長=薬師寺泰蔵・慶応大法学部客員教授)は13日、研究目的のヒトクローン胚(はい)作りを条件付きで認める最終報告書をまとめた。23日に開く同会議本会議で議長の小泉首相らに報告。文部科学省と厚生労働省が、ヒトクローン胚作りを禁止している現行の指針の改定などに着手、研究推進の条件整備に動き出す。
報告書は、体外受精でできる通常の胚(受精胚)も含め、ヒトの胚に関する国の政策の基本的な方向付けになる。
クローン胚は、核を除いた卵子に体細胞の核を移植して作る。現在はクローン人間作りを禁じたクローン技術規制法に基づく指針で、作製が禁止されている。
報告書は、胚を「生命の萌芽(ほうが)」と位置づけて尊重を求める一方、再生医療の基礎研究でのクローン胚作りは新たに条件付きで容認した。研究目的の受精胚作りは現在、生殖医療の研究で行われているが、現状を追認するとともに、それ以外の研究では必要性を認めず、審査体制作りを求めた。受精胚作りは現在、日本産科婦人科学会の自主規制に委ねられており、国としての容認や規制は初めてになる。
胚作りのために卵子を提供する女性の保護、研究機関の限定などの条件と規制の大枠も示した。クローン胚研究については、同会議中心に科学的な検証をし、必要性が認められない場合は中止を勧告することとした。
この日の調査会は、規制方法を中心に議論。細かい規制は法に基づかない指針で十分とする意見と、法に基づく規制が必要とする意見が対立。指針で十分とする多数派が押し切った。
クローン胚作りの条件整備などは、文科省と厚労省が今後検討する行政指針で対応する。
クローン胚作りの条件付き容認は6月に異例の多数決で決められた。採決に反対した5委員は「指針ではなく、あくまで法律で枠組みを定めるべきだ」などとする共同意見書をまとめ、近く提出する。報告書には、少数意見も添付される。
(07/13 23:48)
《朝日新聞社asahi.com 2004年07月13日より引用》