20040624

ヒトクローン胚研究を容認、条件付きで 科技会議調査会


2004年06月24日

クローン技術を応用し再生医療などに用いるヒトクローン胚(はい)作りの是非を検討していた国の総合科学技術会議の生命倫理専門調査会(会長=薬師寺泰蔵・慶応大法学部客員教授、21人)は23日、クローン胚作りを基礎的な研究に限り容認する方針を、異例の多数決で決めた。ただし、クローン人間づくり防止のための胚の管理の徹底に加えて、卵子を提供する女性を保護したり、科学的検証をしたりする制度的枠組みが整うまでの間は、実施を凍結すること(モラトリアム)を条件とした。7月にも最終報告をまとめる。

クローン胚作りは、現在はクローン人間作り禁止を主目的にしたクローン技術規制法(01年6月6日施行)に基づく指針で禁止されている。同法は政府に対し、同会議の検討結果を踏まえ施行後3年以内に必要な措置を講ずるよう求めており、調査会は01年8月から3年近く、クローン胚作りの解禁是非を最大の課題として検討してきた。

クローン胚は、体細胞提供者と同じ遺伝情報を持つことから、拒絶反応の少ない細胞や組織、臓器などを作る再生医療への応用が期待されており、この3年間にも米国などで研究が進んできた。一方、科学的な有用性・安全性や、生命倫理面での疑問も根強く、昨年末に同調査会がまとめた中間報告では両論を併記するのがやっとだった。

この日の調査会では薬師寺会長が「再生医療を待つ患者に社会的に光を当てるべきで、扉をまず開きたい」と述べた。その上で、臨床応用段階でない基礎的な研究に限り容認し、ヒトクローン胚を使った研究の意義を科学的に検証する制度的枠組みなどを整備するまでは凍結する会長案を初めて提示。通例の全会一致方式ではなく、異例の多数決を強行、会長を除く出席者15人のうち賛成が10人と多数を占めた。反対は5人で棄権はなかった。

会長案が示した凍結解除の条件は、クローン人間がつくられることの防止、卵子提供女性の保護、科学的検証などの枠組み整備で、検証の結果、必要な場合は中止勧告も行い得るとしている。再生医療に役立つかや安全かなどの疑問や倫理面での議論不足を指摘する声が出ていたことに、ある程度配慮した内容で、この日の調査会では「容認の条件によってはいつまでも禁止状態が続きかねない」などの声も出た。

調査会は今後2回の会合で凍結解除の条件を詰め、7月に小泉首相が議長を務める本会議に答申する見通し。実際の制度論議などは、その後、国の関係省庁を中心にした実務的な検討に委ねられる。
〈ヒトクローン胚〉 卵子の核を取り除き、生殖細胞ではない体細胞から取り出した核を移植してつくる。これを特殊なやり方で培養すれば、どんな組織や臓器にも育つ胚性幹細胞(ES細胞)を作ることが可能。一方、クローン胚を子宮に戻して育てれば、クローン人間が誕生する可能性がある。通常の受精卵を使ったES細胞の作製は、すでに基礎研究に限って認められている。

(06/23 23:20)

 

《朝日新聞社asahi.com 2004年06月24日より引用》

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