ヒトES細胞8日目に拍動 信州大が心筋細胞分化に成功
2004年05月14日
あらゆる組織の細胞に変わる能力をもつ「ヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)」から、心臓の心筋細胞を作ることに、信州大学医学部の佐々木克典教授らが国内で初めて成功した。臨床応用までには多くの課題が残るが、心筋梗塞(こうそく)などで壊死(えし)した部分に細胞を移植するなど、心臓移植に代わる新たな治療法への応用が期待される。
信州大は03年2月、米国からヒトES細胞を輸入し、増殖・分化の研究を続けてきた。培養から8日目にシャーレの中で細胞がゆっくりと拍動し、心筋細胞に特徴的な横紋筋が確認されたという。
ES細胞は失われた臓器や組織を修復する再生医療の切り札とされる。心臓だけでなく、血管や神経などいろいろな組織に分化するため、狙った組織だけを作るのは難しい。今回の研究で、分化を始めた細胞の集まりから心筋細胞になったのは8%だった。今後、効率よく分化するような培養条件を探り、生体に戻したときに正確に機能するかどうかを確認する。
佐々木教授は「臨床応用への第一歩を踏み出すことができた」と話している。
国内では文部科学省の認可を得た13機関でヒトES細胞を使った研究を進めており、今年3月には京都大が血管を作ることに成功している。
(05/14 01:55)
《朝日新聞社asahi.com 2004年05月14日より引用》