20040422

マウス妊娠にオス不要? 卵子2つでメス誕生 東京農大


2004年04月22日

卵子だけから生まれたマウス「かぐや」=河野友宏・東京農業大教授提供

卵子だけから生まれたマウス「かぐや」=河野友宏・東京農業大教授提供

精子を使わずに卵子だけを操作してマウスの子どもを誕生させることに東京農業大の河野友宏教授(発生工学)らが成功した。生殖にオスが要らない技術で、子どもはメスしか生まれない。哺乳(ほにゅう)類の生殖にはふつう卵子と精子が必要で、卵子だけで子どもを作った例はなかった。発生の仕組みの解明につながる成果で、22日発行の英科学誌ネイチャーで発表する。

オスに関係なく子どもを作ることは「単為生殖(発生)」と呼ばれ、昆虫や魚類などで知られる。哺乳類では自然な生殖にオス(精子)とメス(卵子)が欠かせない。

精子も卵子も性にかかわる一部を除いて基本的に同じ遺伝子がそろっている。だが、精子や卵子ができる過程で、働き方がそれぞれで異なるよう決められる遺伝子があり(刷り込み現象)、精子由来のものと卵子由来のものがそろって正常に発生すると考えられる。

河野教授らは哺乳類の発生になぜオスとメスが必須なのか、そのなぞを解く目的で、二つの卵子の核を使って一方に精子の役割をもたせて研究した。

卵子由来で働いているのに精子由来では抑えられている遺伝子を、卵子でも働かないようにしたマウスを作り、卵母細胞を採取。その核を別の卵子に移植するなどの方法で胚(はい)を作った。

371個の胚を戻して妊娠したマウスを出産直前の時期に解剖。通常の新生児並みに育った胎児が2匹いた。1匹をかぐや姫にあやかり「かぐや」と名付けて育てた。オスと交配させると子どもを出産。生殖能力も確認した。

オスの不要な生殖には体細胞から遺伝的なコピー動物を作るクローン技術があり、今回の技術はいわば「第三の生殖」と言える。ただクローンのように遺伝情報が全く同じというわけではない。

河野教授は「刷り込みで哺乳類の発生が制御されていることが立証された。進化の過程でオスの存在を不可欠にするためこうした仕組みを獲得したのだろう」と話す。

(04/22 08:03)

 

《朝日新聞社asahi.com 2004年04月22日より引用》

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