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米国産牛肉の輸入、一時停止 食肉市場への影響懸念


2003年12月24日

米国で牛海綿状脳症(BSE)に感染した疑いのある牛が見つかったことを受け、日本政府は米国からの牛肉輸入を安全が確認されるまで一時停止したと発表した。米国は輸入牛肉の5割近くを占める主産地だけに、今後、食肉市場の需給逼迫(ひっぱく)や、消費者への影響が懸念される。停止は「全頭検査などで安全が確認されるまで」(亀井農水相)とされ、今後、再開をめぐる対応が通商交渉の火種にもなりそうだ。

農水省は家畜伝染病予防法に基づき、牛や関連の肉製品の輸入を停止した。輸入の届け出があった分については、厚生労働省が荷物を保留するよう各検疫所に指示した。

すでに流通している肉で、脳や脊髄(せきずい)などBSE感染の危険性が高いとされる「特定危険部位」を含まない肉については、厚労省食品安全部は「異常プリオンは蓄積されない、と国際的に認められている。健康への影響はない」とし、当面は回収を予定していない。

また、加工食品についても、厚労省は食品衛生法に基づき、輸入を停止した。すでに流通している分については特定危険部位を使ったエキス類などの加工食品に限り、輸入業者に商品回収を指示する予定。

独立行政法人農畜産業振興機構のまとめでは、02年度の国内の牛肉の消費量(推定出回り量)は93万2000トンで、そのうち輸入品は55万8000トンと6割を占める。国別では米国からが24万トンと豪州(26万2000トン)についで多く、輸入の4割強を占める。日本の消費量の中に占める米国からの輸入牛肉は約3割になる。

今年5月にBSEが確認されたカナダは、牛肉輸入全体に占めるシェアが3%程度だったため、輸入停止の影響は小さかった。米国産の輸入停止について、亀井農水相は閣議後会見で「民間の牛肉の在庫は流通量の1.5カ月分あり、当面の需給に問題はない」としたが、輸入再開までの期間によっては需給が逼迫し、より深刻な影響が出そうだ。

日本政府はBSEに関連してカナダや欧州連合(EU)などに対して牛肉の輸入を禁止しているが、輸入を再開した例はない。

BSE未発生の豪州などに調達先を変更する動きが予想されるが、量をまかなえるかは不透明。牛肉消費の減退も見込まれる。

カナダや米国は、日本のような全頭検査をしていない。亀井農水相や坂口厚労相は「対カナダと同様、米国にも輸入再開の前提として全頭検査を求める」との考えを示した。また、日本で法制化された牛肉の生産履歴管理(トレーサビリティー)も、国内生産者の抵抗から導入のメドは立っていないことから、推進を求める方針だ。

◇   ◇

■牛肉の輸入量 日本の牛肉輸入量は約53万4000トン(02年度)。国別の輸入量は豪州が1位で、米国産は2位で約45%を占める。

(12/24 13:34)

 

《asahi.com 2003年12月24日より引用》

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