BSE感染源、特定できず 農水省検討会の最終報告書
英・伊の牛肉骨粉、疑いは指摘
2003年10月01日
牛海綿状脳症(BSE)の感染源などを調べていた農水省の「BSEに関する技術検討会」は30日、感染原因の一つと見られていたイタリア産の肉骨粉に加え、82年と87年に英国から輸入された牛で作られた肉骨粉が感染源となった可能性があるとの最終報告書をまとめ、公表した。国内のBSE感染は80年代に始まっていたとした。しかし、国内で確認された感染牛7頭の具体的な感染源や感染経路については、最終報告書でも特定できなかった。
同検討会のBSE疫学検討チーム(座長・山内一也東大名誉教授)が7頭の感染牛について詳細に調査した。
その結果、日本への流入経路として、(1)英国で感染が広まっていた80年代に生まれた牛などが82年と87年に計14頭輸入され、その中にいた感染牛が日本で肉骨粉に加工されて国内牛が感染した(2)90年以前に輸入され、加熱処理が不十分だったイタリア産の肉骨粉に病原体が含まれ、国内牛が感染した――という可能性を指摘した。いずれの場合も、そこで感染した国内牛から肉骨粉が加工され、さらにほかの牛へと連鎖的に感染が広まったとの見方を示した。
肉骨粉の工場は、豚や鶏用の飼料と製造ラインを共有している例が多く、こうした製造段階で感染源が他の飼料に混入した疑いがあるという。感染牛7頭の出生・生育地などから、北海道と関東に感染源があったとみている。
一方、7頭に与えられていたオランダ産動物性油脂を使った代用乳については感染源に結びつけるのは難しいとした。
その上で検討会は、今後3年間に関東地方で7~9頭、九州地方で5~7頭、北海道で3~4頭の感染牛が見つかる可能性があると予測。ただし「計算上で、現実と違うこともある」とした。
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《キーワード》BSE(牛海綿状脳症) 牛の脳の組織がスポンジ状に変化し、全身がマヒして死にいたる病気。86年に英国で初めて報告された。01年9月、千葉県白井市で起立不能などの症状を示した乳牛が国内初のBSEと確認され、03年1月までに北海道や群馬県などで計7頭が見つかっている。
肉骨粉は、牛の骨や内臓などを加熱処理し、乾燥させて細かく砕いたもの。BSEの病原体であるたんぱく質「異常プリオン」は熱に強い。肉骨粉にしても分解されない例があり、欧州では有力な感染源とされている。
《朝日新聞社asahi.com 2003年10月01日より引用》