20030509

SARS、トリ・コロナウイルスの祖先から分岐・潜伏か


2003年05月09日

新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」を引き起こすSARSウイルスは、現在のトリ・コロナウイルスの祖先から数十年前に分かれ、何らかの動物の体内に潜んでいた可能性が高い。民間の生物資源利用研究所(沖縄県名護市)の根路銘(ねろめ)国昭所長らの研究で分かった。今後、ウイルス変化の経過が詳しく解明できれば、ヒトへの橋渡しをした動物の割り出しやワクチン開発に役立ちそうだ。

根路銘所長はJRA競走馬総合研究所生命科学研究室の協力を得て、SARSウイルスと、ヒト、トリ、ブタ、ネコ、イヌなどに感染する既知のコロナウイルスを比べた。塩基配列やアミノ酸量の違いをもとに、いつごろ、どのように枝分かれし、現在の姿になったかを示す系統図を作った。

その結果、SARSウイルスは現存のウイルスから変異したのではなく、数十年前、様々な鳥類に感染するトリ・コロナウイルスの祖先から分かれていた可能性が高いことが分かった。その後、何らかの動物に感染、突然変異を繰り返してヒトに対する病原性を強めたとも考えられる。

SARSウイルスが数十年前から存在していたとすれば、今回の集団感染よりずっと前から、ヒトへの感染が起きていたかもしれない。ふつうの肺炎と診断され、その存在が気づかれなかった可能性がある。

根路銘所長は国立感染症研究所・呼吸器系ウイルス研究室長をしていたときに、インフルエンザウイルスのワクチン開発に取り組んだ。「SARSウイルスや近縁ウイルスにどの程度の多様性があるのか、突き止められれば、何をターゲットにワクチンを作ればいいか、手がかりが得られる」と話す。

 

《朝日新聞社asahi.com 2003年05月09日より引用》

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