20030507

身近な紙製品から環境ホルモン溶出の恐れ 大阪市環境研


2003年05月07日

クッキングペーパーや紙コップなど身近な紙製品から内分泌撹乱(かくらん)化学物質(環境ホルモン)作用の疑われる有害物質が溶け出す恐れのあることが、大阪市立環境科学研究所の調査で分かった。再生紙で作った食品包装容器からは環境ホルモンのほか、発がん性が疑われる物質も検出された。プラスチック容器に環境ホルモン溶出の疑問が持たれ紙容器への切り替えが進んだが、これまで規制のなかった紙製品にも問題が浮上したことになる。

同研究所の尾崎麻子研究員らが01年から木材チップから新たにつくる新パルプ製品16品、再生紙製品12品を対象として、1センチ大に切ってエタノールに溶け出す微量物質を調べた。

その結果、クッキングペーパーや紙ナプキン、ティーバッグ、コーヒーフィルター、ティッシュペーパーなど新パルプの13品から、環境ホルモン作用が問題視されるビスフェノールA(略号BPA)が、1グラムあたり34~360ナノグラム(ナノは10億分の1)検出された。クッキングペーパーが最大値だった。

再生紙で作った持ち帰り用サンドイッチや鶏の空揚げの箱など8品からは同じく190~2万6000ナノグラムが出た。最大値のサンドイッチの箱は、BPA溶出が問題視された食器などに使われる合成樹脂のポリカーボネートと同レベルという。

さらに、再生紙9品から発がん性が指摘される4・4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(略号MK)も1グラムあたり1700~1万2000ナノグラム検出された。野菜用段ボール箱が最大値だった。

顕微鏡検査から、再生紙の繊維中にインキや感熱紙の成分とみられる残留微粒子が見つかり、これが原因物質と見られる。新パルプ用紙の原因物質は、はっきりしない。

食品衛生法に基づき、食品向け容器や包装に使うプラスチックや陶器、金属などは使用可能な材質や有害物質の溶出基準がある。しかし、紙製品の規制はない。

尾崎研究員は「人体に直接被害を与える濃度ではないとみられるが、紙製品にも何らかの基準は必要」と指摘している。

<厚生労働省監視安全課の話> 紙容器は問題視されたことがないため、規制してこなかった。危険を指摘する結果が出されたのであれば、内容を確認したうえで、必要があれば検討したい。

■主な紙製品に含まれる物質の量(単位は製品1グラムあたりのナノグラム)

BPA MK
◇新パルプ製品
クッキングペーパー 360
190
紙ナプキン 90
ティーバッグ 68
紙コップ 64
◇再生紙製品
野菜用段ボール箱 2000 12000
ピザの箱 1300 8100
370 5100
鶏の空揚げ用箱 2400 4800
サンドイッチの箱 26000 3900

 

《朝日新聞社asahi.com 2003年05月07日より引用》

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