「ヒトの設計図」解読完了を宣言 日米英など6カ国
2003年04月14日
ヒトのすべての遺伝情報であるヒトゲノム解読計画で、日米英など6カ国は14日、「解読完了」を宣言した。00年に90%を読み取った「概要版」が発表されているが、科学的には今回が本当の節目。遺伝子は約3万2000個とわかった。病気に結びつく遺伝情報の研究をはじめ、こうした情報がどのように働いて生命活動を担っているのかなど、生命科学研究の基盤ができたことになる。
日本側のリーダー役である榊佳之・理化学研究所ゲノム構造情報研究グループプロジェクトディレクター(東京大教授)が遠山文部科学相とともに小泉首相に報告した。
人の遺伝情報は人体の設計図ともいえ、細胞の核にあるDNAに刻まれている。DNAは4種類の塩基(文字)が鎖状につながってできている。
今回、28億6000万個の文字のうち技術的に読み取れない約1%を除く99%を解読した。精度は99.99%以上。「医学、生物学に役立つ情報は無償提供」という、この計画での原則に沿ってデータは公開される。
日本からは理化学研究所や慶応大学などが加わり、約1億8500文字を読みとった。全体の約6%で、米の59%、英の31%につぐ3番目の貢献度だった。
ヒトゲノム解読計画は米国のアポロ計画とも比べられるプロジェクト。86年に提案され、当初は05年までの予定で始まった。日米英独仏中の6カ国24機関が参加。3500億円を超す巨費がつぎ込まれた。
98年にデータを製薬企業などに販売する目的で米企業が独自に解読を始め、激しい競争を展開。概要版発表は共同という異例の形になったが、この競争が解読完了を2年前倒しした。
ただ解読データは配列にすぎず、ゲノム解読後(ポストゲノム)の研究はすでに始まっている。
柱の一つが、たんぱく質だ。遺伝子のつくるたんぱく質が生命活動を担い、その研究は新薬の開発につながる。病気の遺伝子の体系的な研究も欠かせない。ヒトゲノムでは出遅れた日本もポストゲノム研究は欧米と対等以上に戦いたい考えだ。
《朝日新聞社asahi.com 2003年04月14日より引用》