女性の健康、5万人10年間追跡 ホルモン薬の影響調査
2003年03月29日
更年期障害の治療に使われるホルモン薬や生活習慣が女性の健康にどんな影響を及ぼすか――こんな研究を群馬大の林邦彦教授(医療基礎学)らが始めた。看護師5万人に協力を求め、10年間調査する。主目的の一つはホルモン薬の影響。乳がんのリスクを高めると指摘されるが、効果も副作用も欧米のデータによるのが実情なので日本人での評価を目指す。
女性の健康に焦点をあてた大規模で長期的な研究は国内では例がない。研究は日本更年期医学会と共同。各地の看護協会が協力する。30歳以上を対象に、更年期障害で女性ホルモンを補うホルモン補充療法(HRT)を受けているかどうか、その薬はどんな種類か、がん検診の受診の有無とその結果、運動や食事など50項目を調査する。
女性の健康に関して、25万人を対象にした米国の調査で、HRTが骨折を防ぐという効果や、ビタミンEをとると心臓病の危険性が減るといった結果が報告されている。
一方で、HRTは乳がんの危険性を高めるといった報告も昨夏、米国で公表され、日本の治療現場にも混乱を与えた。
しかし、米国では乳がんの発病率は日本の3倍以上あり、喫煙率も高いなど生活習慣が異なる。そんな米国のデータをそのまま日本人にあてはめるのは無理もあるのに、日本に長期にわたる大規模研究はなく説得力のある説明はできなかった。
林さんは「閉経後30年生きる時代になり、女性の生活習慣と健康についての研究が求められている。医師が自信を持って患者さんの心配に答えられるデータを蓄積したい」と話している。
《朝日新聞社asahi.com 2003年03月29日より引用》