建設業者、やまがた地鶏に活路 本業補い、地元雇用確保 /東北・共通
2016年10月13日
山形県大江町の建設会社が地鶏の飼育に取り組んでいる。収入の柱の工事が今後、増えそうにないため、本業を補って雇用を維持することが狙いだ。地鶏生産では後発だが、県も「地域の特産品にできる」と後押しする。
山々に囲まれた山形県大江町のナス畑の脇。最上川沿いの平屋建ての小屋で、200羽ほどの鶏がえさをついばんでいた。県畜産試験場が開発した「やまがた地鶏」。地元の建設会社「兼子土木」が、日本農林規格(JAS)の飼育法に沿って建てた鶏舎で育てる。
同社は今後、約1250万円で4棟の鶏舎を建て、飼育数を現在の年間3千羽から最大1万羽に増やす。「規模を拡大し、採算ラインに持って行く」と佐藤朝男専務(48)。生産コストが減れば、町や県の補助金に頼らないビジネスにできると意気込む。
同社が畑違いの地鶏生産に乗り出したのは2012年。130羽の試験飼育から始め、翌13年に県や町からの補助金計約600万円をもらって鶏舎を建設して本格参入した。道路の補修といった公共工事の受注はあるが「田舎に新しい道路を造る時代は終わった。土木業はなくならないが、大きくは伸びない」(佐藤専務)との判断がある。地元の雇用を維持するためにも地鶏事業に期待がかかる。
大江町や山形県も環境整備に乗り出した。大江町は、地鶏専用の県内初の公設の処理場を約4千万円かけて建設。民間相場よりも1割ほど安い処理料で8月に業務を始めた。町内の出荷体制を整え、特産品に押し上げる狙いがある。自らも鶏を飼っている大江町の渡辺兵吾町長(71)は「鶏は高齢者でも飼える。業として成り立つようにしたい」と話す。
比内地鶏(秋田)や南部かしわ(岩手)、青森シャモロックなど東北各地にはすでにブランド地鶏がある。山形では県畜産試験場が00年度から開発に乗り出し、県内の愛好家が育てていた赤笹シャモと名古屋種などをかけあわせて「やまがた地鶏」を開発した。歯ごたえとコクがある味だが、飼育は県内全体で1万7千羽。県は、ブランド地鶏への成長を期待する。
県は鶏舎の建築費用を補助し、業者らと協議会を結成。メニューにやまがた地鶏が出る飲食店をリストにしてホームページで公開し、パンフレットをつくった。
ただ、県内に生肉で出荷できる処理施設が限られ、地元の居酒屋や料理店での消費にとどまっているのが現状だという。県畜産振興課の鈴木義邦課長は「少し高いけどおいしい鶏を食べたいと思う人たちをターゲットに、販路を広げる努力をしたい」と話している。 (前川浩之)
【写真説明】
鶏舎では「やまがた地鶏」がえさをついばんでいた=いずれも山形県大江町
新たに処理施設もできた
《朝日新聞社asahi.com 2016年10月13日より抜粋》