遺伝子組み換え、違反に罰則 生物規制法案概要
2003年01月23日
遺伝子組み換え生物(LMO)が無秩序に広がって在来種を脅かしたり人の健康を害したりするのを防ぐため、政府が今国会に提出する「遺伝子組み換え生物等の規制による生物多様性確保法案」(仮称)の概要がほぼ固まった。業者が国に利用計画と環境影響評価書を提出して承認を得ることを義務づけ、国がLMOの回収や栽培中止などを命じることができ、業者が従わなかった場合は懲役刑を含む刑事罰を科することなどが盛り込まれている。
LMOは、害虫に強くしたり、除草剤でも枯れなくしたりした農作物など屋外にある「第一種」と、新薬研究用の動物など遮断された施設内で管理される「第二種」とに分かれる。
政府はこれらについて、まず、生物多様性への影響防止策やLMOの取り扱い注意事項などの「基本的事項」を定めて公表する。第一種LMOを輸入する業者などは、事前に利用計画と生物多様性影響評価書を所管の大臣に提出、承認を得なければならない。
国は専門家の意見を聴き、生物多様性への影響がない場合には承認し、利用計画を公表する。承認なしに輸入や譲渡などをした業者には回収などを命じることができる。承認時に予期しなかった事態が生じ、遺伝子を組み換えた農作物が在来種と交雑したり、在来種を減少させたり、有害物質を出して他の動植物に危害を与えた場合やその恐れがある場合は、国は栽培中止などを命じることができる。
第二種LMOは、国が環境中への「拡散防止基準」を定め、業者や研究機関は従うことが義務づけられる。地震や火災などで実験動物が外部に逃げ出し、在来種に影響が出た場合などは、利用者は応急措置をしなければならず、国は回収などを命じることができる。さらに、国は業者や輸入者、栽培農家、店舗、倉庫などへの立ち入り検査ができる。
法案は、環境、厚生労働、経済産業、文部科学、農林水産の5省共管。刑事罰は最高で、懲役が1年、罰金が100万円とする方向で調整が進んでいる。
法案はLMOを輸出入する際の規制措置を定めた生物多様性条約「カルタヘナ議定書」を批准するため、国内制度を整えることが目的だ。小泉首相は02年に南アフリカで開かれた環境開発サミットで批准を公約。議定書は03年中にも発効するとみられる。
《朝日新聞社asahi.com 2003年01月23日より引用》