ヒトへの臓器移植用、クローン牛の技術開発
2002年10月13日
動物から人への臓器移植に伴う激しい拒絶反応を抑え、移植を可能にすると期待されるクローン牛を作り出すことに、東京女子医大の澤田登起彦助手とJA全農ETセンター(北海道上士幌町)などのグループが成功した。17日に東京で始まる日本移植学会で発表する。豚で先例があるが、牛は、豚では困難なタイプの移植にも適用できる可能性があるという。
移植に必要な臓器や組織が不足しているため、動物のものを転用する研究が進められている。しかし、人同士の移植では見られない「超急性拒絶反応」が起き、現在の免疫抑制剤では抑えられず大きな壁になっている。
研究チームは、牛胎児の細胞を取り出し、超急性拒絶反応の原因となる抗原の遺伝子を破壊。この細胞の核を、核を除いた卵子に入れてクローン牛の胎児を作り出した。
普通の遺伝子は細胞中に2個1対が存在するが、この実験では、問題の抗原遺伝子のうち1個を壊した。現在、両方壊した牛を誕生させる研究を進めている。
豚では今年、海外で遺伝子2個の破壊に成功したとする報告があった。だが、糖尿病患者を煩雑なインスリン注射から解放する膵島(すいとう)(膵臓のインスリン分泌組織)移植は、豚では膵島組織が壊れやすいため牛の方が実現性が高い、と澤田助手らは見ている。牛では日本のクローン技術が世界トップレベルにある。
同グループは今後、このクローン牛の臓器や細胞をサルなどに移植し、牛のウイルスが人にうつる可能性がないか、安全性を確かめる。
《朝日新聞社asahi.com 2002年10月13日より引用》