20020801

卵子前細胞を対外培養 マウス使い出産に成功

群馬大


2002年08月01日

マウスの,卵子になる前の細胞を対外培養で成熟させ,出産まで導くことに, 群馬大遺伝子実験施設の畑田出穂・助教授らのチームが成功した。未受精卵子 ではヒトでも例があるが,今回は胎子から採取した生殖細胞を使った。この技 術が確立されれば,女性ががんで放射線治療などを受ける前に,数の限られた 卵子ではなく卵巣の一部を保存し,子どもが持てるようになる可能性がある。

1日付けの英科学誌ネイチャーで発表する。

マウス胎子の卵巣から将来卵子になる生殖細胞を取り出して培養した後,核 除いた成熟中の卵子に核移植した。

この卵子をそのまま長く培養することは難しいため,再び核を取り出し,よ り成熟の進んだ卵子に核移植して培養を続けた。これを体外受精させ,メスに 移植して出産させた。出産数は16匹で,生殖細胞からの成功率は7.5%だった。

現在,国内でも複数の医療施設で,がん治療で卵子にダメージを受ける女性 たちが,事前に卵子を採取,保存中だ。しかし,卵子は採取数が少なく,生殖 医療が成功する可能性は限られている。

ヒトでも卵子になる前の生殖細胞を使えるようになれば,それを無数に含む 卵巣の一部を保存することで,出産に至る機会を拡大し得る。

畑田助教授は「卵子になる前の生殖細胞は対外培養が困難だったが,核移植 を組み合わせて成功率が飛躍的に上がった。卵子の成熟を研究する手段にもな り,不妊の解明に役立つのではないか」と話している。

 

《朝日新聞 2002年08月01日より引用》

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です