ヒトES細胞を国内初、作製へ 京大で承認
2001年11月05日
京都大学再生医科学研究所の倫理委員会(委員長=星野一正・京大名誉教授)は4日、さまざまな臓器や組織になる可能性を持ち、「万能細胞」と呼ばれるヒト胚(はい)性幹(ES)細胞を、人間の受精卵から作る国内初の計画を了承した。今後、文部科学省の専門委員会での審議などを経て、早ければ来春にはヒトES細胞作製が始まる予定だ。(2面に解説)
ES細胞をねらい通りの細胞に変化させて体内に移植することにより、アルツハイマー病やパーキンソン病、糖尿病など根本的な治療法のなかった病気を治すことができると期待されている。欧米では、すでにヒトES細胞から神経細胞や血液細胞、筋肉などを作ることに成功している。
ただし、ES細胞は生命の芽である受精卵を壊して作るため、作製や使用の是非をめぐり各国で議論になっている。日本では今年9月、文部科学省が、厳しい条件付きで認める「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」を出した。
この指針に基づき、京大再生研の中辻憲夫教授が計画を申請した。これまでのサルやネズミのES細胞を作った実績を生かし、不妊治療目的で作製されたが使われず廃棄が決まった凍結受精卵の提供を受けて、特殊な条件で分離、培養してヒトES細胞を作る。受精卵の提供は慶応大学病院など国内の3施設を想定。作製された細胞は、文部科学省から承認を受けた施設に無料で配布される。対象には民間企業の研究所も含まれる。
今後、受精卵の提供施設とES細胞の利用施設の倫理委員会で了承後、文部科学省の専門委員会で議論され、総合科学技術会議に報告される。
《朝日新聞 2001年11月05日より引用》