酷暑、九州各地で家畜ダウン 牛も夏バテ、乳減る 【西部】
2001年08月11日
九州の各地で猛暑のため、例年になく牛やニワトリが熱射病などで死ぬなど家畜に被害が出ている。また、乳牛が夏バテのために乳量が減り、牛乳が品不足になる恐れもある。暑さが長引けば、野菜や果樹の生育不良を引き起こすことも予想され、農業関係者は早い秋の訪れを待ちわびている。
九州農政局農産課によると、九州では7月末までに乳牛116頭、肉牛49頭が猛暑の影響で死んだ。とくに暑さに弱いニワトリは被害が多く、ブロイラーは17万羽近く、採卵鶏は6千羽以上が死んだという。同課は、8月に入っても暑さは続いており、被害はもっと増える可能性もあるとみている。
このため、農水省畜産部衛生課は7月下旬、各都道府県に対し、畜舎の換気を十分に行うなど家畜の暑熱対策の徹底を求める文書を送った。
福岡県農政課によると、3日現在、久留米市や甘木市などを中心に、乳牛83頭、肉牛6頭が熱射病で死んだ。採卵鶏の死亡も4400羽にのぼったという。
佐賀県内では7月にブロイラー約1万8千羽が熱中症で死んだ。県畜産課によると、例年この時期に死ぬのは数千羽程度で、1万羽を超したのは7年ぶりという。
同課の江永直樹副課長は「農家には、畜舎に扇風機で風を送るなどして温度を下げるよう呼びかけているが、被害は拡大しており、8月はさらに心配だ」と話す。
ばて気味の乳牛たちを守ろうと、福岡県築城町の白川牧場では、大型扇風機14基が牛舎に取り付けられ、24時間態勢で活躍している。屋上ではスプリンクラーで水をまくが、牛舎内は33度に達することもある。約40頭いる牛は食が細り、乳の出も2割ほど減ったという。
九州で一番の生乳生産量を誇る熊本県。同県酪農業協同組合連合会によると、7月下旬、県内の1日平均の生産量は592トンで昨年同期の96・5%に減った。暑さから乳牛にストレスがたまり、乳の出が悪い。牛乳が品不足になる恐れもあるという。
熊本での生産量の減少に加え、生乳100%の牛乳の需要の高まりから、九州からの主な出荷先の関西などで品不足を招きつつあり、生産者は今後の天候が気がかりだ。
一方、農作物は今のところ目立った被害はない。だが、福岡県農政課によると、野菜や果樹にとっては、この猛暑が生育不良や品質低下につながりかねないという。
県生産流通課は「長引けば、露地ものの夏秋ナスがつやがなくなるほか、夏ギクの開花遅延を招く。ミカンやイチジクは、糖度は増すが、小玉になる」と心配している。
◆今年の猛暑による家畜被害
(九州農政局まとめ、7月末現在)
乳牛 肉牛 豚 採卵鶏 ブロイラー
福岡 43 5 0 3845 0
佐賀 11 12 4 110 17900
長崎 38 13 35 50 6575
熊本 13 1 1 1500 200
大分 5 3 4 0 0
宮崎 5 12 3 0 56770
鹿児島 1 3 6 655 87488
計 116 49 53 6160 168933
【写真説明】
牛舎内に設置された大型扇風機に向かって涼をとる乳牛たち=福岡県築城町船迫で
《朝日新聞 2001年08月11日より引用》