激暑、ふ~っ 前橋など40度、各地で記録更新
2001年07月25日
日本列島を包み込んだ暑さは24日、一段と厳しさを増した。静岡県佐久間町で、この夏一番の40・2度を記録。前橋市で40・0度、甲府市で39・7度など、各地で観測記録を塗り替えた。熱中症で倒れる人が相次ぎ、3人が死亡した。首都圏の水がめも減っており、取水制限の恐れがある。農畜産物への影響も出始めた。暑い夏は9月上旬まで続くという。
24日は朝から記録ずくめの暑さだった。東京の最低気温は28・7度で、7月の朝の気温としては観測史上最高だった。その後、38・1度に達し、7月としては過去最高を記録した。
甲府市の39・7度も7月としては過去最高。前橋市で40・0度、浜松市で38・6度を観測し、いずれも観測史上最高の暑さとなった。
気象庁によると、この日の暑さは、中部地方から関東地方にかけて西よりの風が吹き、フェーン現象が加わったのが原因という。
暑さは「雨が降らず、地面がぬれていないのに日照時間が長く、気温が上がるため」という。
6月21日から今月22日までの降水量は、東京が平年のわずか2%の4・0ミリ、横浜は同4%の8・0ミリ。日照時間は、関東周辺が平年の2倍、東海地方は1・5倍。四国から九州も1・2倍と多い。
晴れの日が続いているのは、勢力の強い高気圧に覆われているためだが、その高気圧を強くしているのは、フィリピン付近の海面水温の影響という。気象庁によると、この海域の水温が平年に比べて高い。ここで上昇気流が起こり、その上がった空気が、ちょうど太平洋周辺で下降気流となり、雲を吹き飛ばして好天になる、とのメカニズムという。
同庁は、8月から9月にかけても、太平洋高気圧が弱まる要因は見当たらないとしており、「平年より暑い日が続く」と予測している。
〇熱中症で3人死亡 埼玉で50歳、三重で93歳、熊本で12歳
記録的な猛暑となった24日、全国各地で熱中症とみられる症状で救急搬送される患者が相次ぎ、埼玉県と熊本県、三重県で、中学生やお年寄りなど計3人が死亡した。
同日正午過ぎ、埼玉県小川町木呂子の山中にある遊歩道下の斜面で、同県本庄市立中央小学校の林間学校の引率をしていた同校教諭、長井清光さん(50)=群馬県伊勢崎市上諏訪町=が倒れているのを、同僚が見つけた。救急隊が到着した時には死亡していた。
熊本県では午後2時20分ごろ、中央町にある「日本一の石段」上りに挑戦していた同県東陽村北、東陽中学1年、吉崎雄太君(12)が倒れ、運ばれた病院で死亡した。
午後4時ごろには、三重県小俣町で無職の女性(93)が倒れているのを家族が見つけ、119番通報したが、すでに死亡していた。
東京都では、60人が熱中症で救急搬送された。国分寺市の住宅新築現場で働いていた塗装工の男性(68)ら3人が重体になった。
37・2度を観測した京都市では、京都外大西高校の野球部員10人が、グラウンドで練習中に次々と倒れた。9人が入院し、うち2人が集中治療室に収容された。
また、川崎市で14人、横浜市で12人、千葉市で8人が治療を受けた。
〇首都圏で取水制限も
首都圏の水がめのダムは7月に入って貯水量が急減している。利根川では八つのダムの合計で貯水量は約2億5千万トン。貯水率は75%(平年比86%)まで下がった。
このまま雨が降らないと、8月6日ごろには10%程度の取水制限が必要になる計算だという。
取水制限が始まっても、東京都水道局は当面、多摩川の小河内ダムなどの水を融通してしのぎ、学校や工場などの大口使用者に具体的な数字を示して自主節水を求める。
しかし、制限が30%程度になると水道の圧力を下げるなどの給水制限に踏み切らざるをえず、高台で水が出にくくなったり、時間帯によっては2階で断水したりする可能性もあるという。
都は、96年の渇水時、増雨効果のある溶液を燃やす作戦を展開した。給水制限に入れば、5年ぶりに人工雨を降らせる計画だ。
◆乳牛もニワトリもバテバテ 桃やスイカ高値に
牛やニワトリも、夏ばてしている。
埼玉県東松山市の篠原養鶏場によると、ニワトリは35度を超えると自分で体温調整ができなくなり死んでしまう。同養鶏場は「最近は、朝からずっとニワトリに水をかけて冷やしている」。それでもえさを食べずに水分を多くとるので、たまごが小ぶりだという。
千葉酪農農協の担当者は「気温が高くて乳牛も食欲不振。猛暑で乳量が減っている」と心配する。
桃は出荷が遅れ気味。卸売会社「東京青果」(東京都大田区)によると、高温で実が落ちたり、昼夜の温度差が少なくて着色が遅れたりしているのが理由という。 桃やスイカの需要は伸びているが、生産量が変わらないことや収穫が遅れぎみで、卸値は例年より高いという。
卸売会社「東京築地青果」(東京都中央区)は「スイカは通常の1・5倍程度の2玉3千円くらい。桃は例年ならば18玉で3千円前後だが、4千円ほどになっている」という。
【写真説明】
水位が下がった矢木沢ダム=24日午後2時30分、群馬県水上町で、本社ヘリから
《朝日新聞 2001年07月25日より引用》