乳牛の肉、付加価値を 道総合研究機構、新研究に着手 /北海道
2016年06月24日
国内最大の肉用牛の産地・北海道。多くを占める乳牛(ホルスタイン)の牛肉としての価値を高めようと、道立総合研究機構が「おいしさ」の指標づくりなどを今年度から始めた。環太平洋経済連携協定(TPP)を見据えた輸入牛肉との差別化が狙いだ。
「十勝産黒毛和牛 100グラム当たり494円」
「道内産牛切り落とし 同312円」
「牛肉オーストラリア産 同300円」
札幌市内のスーパーの牛肉の価格だ。「輸入牛肉との味の違いを消費者に伝えられる指標を出せないか」。同機構の畜産試験場(新得町)などが始めた研究対象は、牛乳を生産せず、種牛からも外れた去勢された子牛。道内では約21万5千頭が肉用牛として飼育されているが、ほとんどがホルスタインの去勢牛とみられ、全国の6割余りを占める。
ホルスタインの牛肉は、脂身の少ない赤身牛肉。霜降りの高級和牛肉とは違い、スーパーなどで買いやすい「国産牛肉」として消費者の人気を得ている。
ただ、見た目が近い輸入牛肉と競合関係にあるものの牛肉の味の特徴を消費者に示す評価方法がない。このため、うまみ成分の量や肉の硬さ、肉汁の量など赤身肉のおいしさを消費者にわかってもらえる指標を3年以内につくる。担当する大井幹記主査は「これからは輸入牛肉との差別化が必要。牛乳の消費が減る中、雄の牛肉をうまく回らせないと酪農に影響が出てくる」と話している。
根釧農業試験場(中標津町)は、乳牛が子牛を産んだ後にかかる「周産期疾病」の低減に取り組む。分娩(ぶんべん)から1カ月以内に発生する病気の総称で、道内では死亡要因の3割を占め、年間約19万頭の乳牛がこの病気で処分され、被害額は約43億円に上るという。
分娩前の搾乳をしない「乾乳期」に太り過ぎてえさを食べなくなり、エネルギー不足から分娩後に発病を招くとされている。搾乳しない期間やエネルギーやカルシウムの与える量などを研究し、乾乳期の管理マニュアルを作る。
(大久保泰)
【写真説明】
出産直後に病気にかかりやすい母牛の管理方法が課題だ=根釧農業試験場提供
《朝日新聞社asahi.com 2016年06月24日より抜粋》