薬開発にクローン牛 ヒト遺伝子入れミルクから抗体 キリンビール
2001年03月07日
キリンビールは、ヒトの遺伝子を組み込んでヒトの免疫システムの一部をもったクローン牛を誕生させ、これを動物工場として医薬品を作る研究を始めた。細菌やウイルスによる感染症、自己免疫病などの治療薬の開発をめざす。
米バイオベンチャー企業のヘマテック社(コネティカット州)との共同研究で、目標は、ポリクローナル抗体という、免疫反応を起こす医薬品の開発だ。
ヒトの体は病原体が入ってくると、抗体をつくってこれらをやっつけようとする。ウイルスにはインフルエンザウイルスのように姿を変えるものもある。それぞれに対応した様々な抗体ができる。
キリンは、多様な抗体を大量生産する方法を考えた。まず抗体を作るヒトの遺伝子を牛の体細胞に組み込む。この体細胞からクローン牛をつくって細菌やウイルスに感染させ、できた抗体をミルクや血液から取り出す。
ポリクローナル抗体は現在、ヒトの血液や動物から作られている。しかし、ヒトでは大量生産が難しい。動物からのものは、一回使うと、これに対する抗体ができて、もう使えなくなるなどの問題がある。キリンの手法はこうした問題を解決できる可能性があるという。
がんなどの治療薬として特定の抗原に反応するモノクローナル抗体は開発されているが、ポリクローナル抗体を動物工場でつくる試みは世界的にも珍しい。
《朝日新聞 2001年03月07日より引用》